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さて、どうしましょう。
もちろん、ローザとの対決を忘れたわけではない
パーティーまでもうあまり時間がない。
離宮のみんなを味方につけるなんて、無理難題すぎない? ……ここにいる人たちのほとんどが私のことを敵視しているのに。
まぁ、命がかかってるわけだし……。
「すごく、呑気ですね」
ミアは私を呆れた様子で見る。
私はベッドで仰向けになりながら、今後のことを考えた。
何か策を練るって言ったって……、離宮の女性たちと仲良くなる?
…………てか、私、女友達いないから分からないのよね。
無理に仲良くなるのも違う気がするし……。
……あ、そういえば本!
私は思い出して、部屋にあった本を取り出す。読もうと思っていて、すっかり忘れていたわ。
「こんな時に呑気に本ですか……」
あ、またその呆れた表情。ミアにどれだけ愛想尽かされているんだ、私。
「こういう時こそ自分のペースを乱されちゃダメなのよ。無理して動いても空回りしちゃうでしょ」
私はベッドの上に数冊本を置いて、順番にペラペラと読み始めた。
随分と古びた本だ。丁寧に扱わないと、簡単に破けてしまいそうだわ。
部屋にあった書物にざっくりと目を通す。
どれも特に面白い情報は載っていなかった。メルビン国の歴史だったり、しきたりだったり……。
「ゲームの必勝法とか書いていましたか?」
私がため息をついているのを見て、ミアは皮肉を言う。私はミアの方を見ながら、言葉を返す。
「離宮では権力が全て、って書いていたわ」
「このままだと負けてしまいますよ……。イリーナ様まで敵に回してしまいましたし……」
「権力がなによ。上等だわ」
私はそう言って、ベッドの上に立ち上がる。ミアは怪訝な表情を私に向ける。
「その自信は一体どこからくるんですか?」
「だって、なんとかするもの」
「え?」
「ローザ様からのゲームは参加確定。私は逃げない。……じゃあ、なんとかするしかないでしょ?」
「もう勝敗は目に見えて」
「馬鹿ね」
私はミアの声に被せるように声を発した。彼女を真っ直ぐ見つめながら、言葉を続けた。
「変えられない過去に縋っているよりも、変えれる未来に執着しなさい」




