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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 なんだか広場の方が騒がしい。

 私とミアは広場の方へと足を進めた。朝起きたばかりの女性たちが沢山集まっている。

 近づいてみると、どうやら何か柱に一枚の紙が貼ってあるようだった。

 何かしら? 人が多過ぎて見えないわ。

「あ、来たわよ」

 一人の女性が私の存在に気付く。その声に従って、私の周りにいた女性たちは一気に私へと視線を向ける。

 騒がしかった声も静かになっていき、皆黙ったまま私を見る。そして、紙の場所まで私を歩かせくれるかのように、道が作られる。

 あの柱に貼られている紙が私に対して何か書いてあるということは分かった。

 私は開けられた道をゆっくりと歩く。その後ろをミアもついてくる。

 …………もう見なくても分かる。あの紙は絶対私について書かれている。

 紙の目の前まで来て、私は立ち止る。そこに書かれている内容を読み上げた。

「第二夫人ローザからのゲーム挑戦状……?」

 なにこの馬鹿げた紙は……。

 私が思わず顔を顰めていると、その隣でミアが顔面蒼白になっていた。

 え? これってそんなにまずいの? 

 ミアの反応を見て、私も少し焦る。

 私は急いで紙に書かれている内容を把握する。

 内容はこう。この挑戦状を受け取った者は挑戦状を出した者より位が上でなければ、断ることはできない。

 ……つまり、私は強制参加。

 しっかりと、私の名前が書かれている。

 ローザが奪うものと書かれたの枠の中に「命」と書かれていた。その隣にあるアリシアが奪うものと書かれた枠はまだ空欄だ。

 訳が分からない。ここの離宮で行われているゲームのルールなんて知るはずがない。

「ねぇ、これどういうこと?」

 私はミアにそっと聞いた。彼女は強張った顔のまま答える。

「ローザ様がアリシア様にゲームの挑戦を」

「それは分かるわ。この『命』っていうのは何?」

「…………ローザ様がゲームに勝った際にはアリシア様の命を奪う、ということです」

 声のトーンを下げて、ミアはそう教えてくれた。

 ……なるほど。そう来たのね、ローザ。よっぽど私にいなくなってほしいのね。

 楽しくなってきたじゃない。

 私は思わずその場で笑みを浮かべてしまう。

「私も何を書いてもいいの?」

「はい。命、と書いてもいいですし……。奪えるものは身分関係なく平等なので」

 ……ローザから奪いたいもの。別に彼女の命は要らない。

 紙の一番下に書かれているゲーム内容の方へと目を向ける。

 この離宮でどちらの方が勢力が強いか。次に開催されるパーティーで結果発表。

 …………圧倒的私が不利なゲームにしてきたわね。

 残りたったの数日間しかない中で、この離宮で自分の味方をローザよりも増やせって?

 それに大勢人がいるパーティーでどれだけの規模の派閥を持っているかってお披露目?

「本ッ当、良い性格してるわね、彼女」

 私は少し考えてから、魔法で自分の枠を埋めた。

『身分』

 空白だった場所に、その文字が綴られた。

 もう後には退けない、と私は覚悟を決める。

 私は方向転換をして、足を進める。皆が驚いた表情で私を見ている。誰も何も言わず、ただ私の動きを見ている。

 きっとこの挑戦状を見て私が絶望すると思っていたのだろう。

 ……残念だけど、悪女はどんな状況でも嘆かないのよ。

 私は胸を張って、堂々と部屋へと戻った。

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