表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

675/710

675  ニ十歳 シーカー家長男 デューク

 ……やはり、この場所は嫌いだ。落ち着かない。

 俺は朝、日が昇る前に起きて、王宮の周りを走っていた。運動は思考をまとめてくれる。

 久しぶりに会う祖父は相変わらず頑固者だった。俺は喧嘩しにきたのではなく、交渉をしに来たのだ。それを頭に入れて、怒りを必死に心の奥底へと押し込んだ。

 他国との関りが本当に必要なのかと問われれば、デメリットも勿論ある。……だが、このままではデュルキス国が崩壊する。

 魔法至上主義という制度はある程度うまくいっていたが、リズと言う平民が魔法を持ったことによって大きく崩れた。

 ここがデュルキス国の分岐点となるだろう。国が崩壊するか、発展するか。

「一晩ここで過ごして少しは考えが変わったか?」

 俺が走り終えたのと、同時に祖父の声が聞こえた。

 ……近くにいたの、気付かなかった。

「いいえ」

 俺は突然現れた祖父の姿に驚きつつも、確かな声でそう答えた。

「……長居するな。揉め事を起こされては困る。それにお前の隣にいたあの子はあの離宮で今ごしているのだろう? ……そのうち泣いてお前に飛びついてくるだろう。デュルキス国のご令嬢があの離宮で生き抜けるはずがない」

 俺は思わず笑いだしそうになった。

 国外追放されたのに、またデュルキス国へと自力で戻って来れたような女だ。離宮などの嫌がらせなど虫が飛んでいるようなものに過ぎない。

 彼女の逞しさを祖父は全く知らないのだろう。

「彼女を侮りすぎですよ」

「……お前の女が生きて帰れるよう、見張りはつけておいた」

「ミアのことですか……。それは頼もしいです」

 ミアがいるのなら安心だ。

 彼女の強さは目を瞠るものだ。侍女という立場ではあるが、身体能力は戦士並み。

「あの黄金の瞳を持つ少女の名はなんというのだ?」

「アリシア、と言います」

 突然アリシアの名を聞かれたことに驚きながら、そう答えた。

「愛しているのか?」 

「とても。自分の立場を忘れるほどに」

 祖父はフッと口角を上げて笑い、「片想いか?」と付け足して質問した。

「めちゃくちゃラブラブですよ」

 俺は少しムッとして、祖父を睨みながら返答する。

「大切にしなさい。守るものを失うと、途方に暮れることになる」

 祖父は、そう言って自分に言い聞かせているように見えた。

 祖父には子供は数人いるはずだ。中でも母は特別お気に入りだったのだろう。

 俺の記憶にある母は賢く、話も上手だった。祖父は頭は固いが愛に溢れた人だと言っていた。

 ……本当にその通りだ。

 俺は微かに残るこの王宮での母との記憶を思い出す。…………思い出に封印していたが、悪い思い出ばかりではない。

 母が殺され、俺が侍女を殺して、強制帰国までの記憶は良いものだ。

 まさか俺がここに戻って来るとは……。

 アリシアが色々な所へと羽ばたき、ジルまでもがラヴァール国との外交を担うほどになった……。誰かを連れて行くことを推奨したが、拒否された。一人で大丈夫だ、と。

 俺もメルビン国と友好的な関係を取り戻したい。それが母の願いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ