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「……まぁ、それはそうですね」
私からすれば、デュルキス国側が歩み寄っていることが奇跡だと思うもの。
「そこでだ」
「はい」
「四日後、王宮でパーティーが開かれる。王族や貴族がそろいもそろって集まる大きなものだ。そして、もちろん俺たちはそこに出席する」
……全くデューク様の計画が読めない。
そもそもそこまでの大規模なパーティーにデューク様はまだしもメルビン国となんの繋がりもないデュルキス国の私が出席できるのかしら。……デューク様がいるならそこは心配しなくてもよさそうだけど。
「アリシアには最高のドレスを用意する」
「……そんなに私が目立ってもいいんですか?」
「それが目的だ。パーティーで一番輝くのがアリシアだ」
「あの、さっきから計画が全く見えてこないんですが……」
私はオーヴェン国王――デューク様のおじい様との喧嘩に巻き込まれたみたいもの。……この喧嘩がすごく国際的なのだけど。
とにかく、私は部外者なのよね……。その私が一番目立つのって……。
「祖父は俺たちに歩み寄る気はなさそうだ。最高権力者がなびかないのであればどうしようもない…………が、彼も馬鹿ではない。民の声には耳を傾ける。そこで君の出番だ、アリシア」
「私の出番……?」
「俺は街へ出て、民衆を味方につける。アリシアは貴族を頼んだ」
……デューク様の方が圧倒的に規模がデカい。
私は真っ先にそう思った。
というか、デューク様の言っていることって無理難題すぎない……?
こんな無茶な作戦が到底うまくいくとは思えない。
メルビン国をまるごと私たちふたりで支配しようとしているようなもの……。
「あまりにも無謀では……? それなら国王一人を陥落させた方が……」
私はなんとかそう口にした。デューク様は私をじっと見つめながら、口を開く。
「それなら意味ないだろ?」
「……え」
「国王だけが突然デュルキス国との関係を改善しようとしたところで、民衆の意向が反対だったら、国は混乱状態になり、反乱が起こりかねない」
…………そうだわ。その通りだわ。
オーヴェン国王が歩み寄る気が全くないのは、もしかしたら国全体の意向なのかもしれない。
冷戦状態が一番平和的だもの……。私ったら、どうしてそこまで考えが及ばなかったのかしら!
「それに悪女は無謀な挑戦を成功させるものだろ?」
デューク様は私を煽るような口調でフッと口の端を小さく上げた。




