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じっちゃんのことは救えなかったけど、僕はこれから多くの人を救う。
リオという少年はアリシアが救ったんだろう。
「国王には会った?」
レオンの言葉に僕はハッと我に返る。
「うん」
「何か話した?」
「期待している、みたいなことかな。特には……」
「ということは、まだ信用されてないな」
リガルが話に入ってくる。
信用されていない……。確かに、まだ斑点病の治療薬の効果を証明できていない。しっかりと調合して、国王にこの治療薬の価値を示さないと……。
間違いは許されない。……デュルキス国との関係が悪化するだけでなく、僕の首もはねられる可能性も充分にあるんだ。
「斑点病の治療薬を完成させた、なんて普通信じられねえもんな。そんなものがあったら、どこの国もデュルキス国と仲良くなりたがる。だが、そのデュルキス国は閉鎖的な国だ。そんな国の人間がわざわざラヴァール国にまで足を運んで交渉をしようとするなんて」
「おい、やめろ」
リガルがペラペラと話すのをレオンは止めた。リガルの言葉を聞きながら、僕の表情が少しずつ暗くなっているのを察したのかもしれない。
リガルの言う通りだ。
しかも、やってきたのは僕のような少年。馬鹿にされていると思われても仕方がない。
「まぁ、そんな一人で考え込むな。俺らがいる」
レオンはそう言って、僕の頭をクシャクシャっと撫でる。
知らない場所で知らない人たちに囲まれた中で戦わなければならないと思っていた恐怖が少しだけ緩んだ。
アリシアはちゃんとここにも僕の居場所を作ってくれていたんだね……。
僕は笑みを浮かべ「ありがとう」と呟いた。




