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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 私は扉を開けて、お盆をミアの前へと持って行った。ミアは黙ってお盆を受け取った。

 勢いに任せて声を荒げたりしない。

「毒をありがとう」

 私は笑顔を作り、柔らかな口調でそう言った。

 あなたたちのつまらない嫌がらせを高みの見物でもしておくわ。こういう時は沈黙が一番。 

 私のことをなめている者はなめてさせておけばいい。事を大きくせずに、品性を欠かずに優雅に過ごしておく。私はデュルキス国を背負って、今この離宮にいるのだから。

 反撃しないわけじゃない。ただじっと待ち、その時を狙っている。

「毒?」

 ミアは私の言葉に目を見開いた。

 もしかしてミアは何も知らなかった……? 

 彼女は暫く固まった後、すぐにどこかへと走りだした。

「どこかに行っちゃたわ」

 今が離宮を探索する絶好のチャンスだけど、とてもじゃないけどそこまでの体力はなかった。流石に今立ってるのがやっとだもの。

 敵の陣地を動き回るのは良くない。

 私は部屋へと戻り、ベッドへと横になった。本を読む気にもなれない。

 ……なにもできないって暇ね。

 私は天井を眺めながら毒を盛った犯人について考えた。

 ここで誰かに恨みを買った覚えもないし、そもそも全員が敵だから犯人をしぼりだせない。知らない人たちばかりだし。 

 国王はそんなことをするような人ではなさそうだった。それにミアも驚いていたし……、どこかに行っちゃったけど。

 というか、この件、デューク様が知ったら…………知らせないでおこう。この国が滅びかねないわ。

 コンコンッと扉のノックが聞こえたのと同時に、ミアが額に汗を滲ませながら部屋へと入って来た。

「え、なに?」

「これを飲んでください」

 そう言って、彼女はコップに入った白く濁った水を私へと渡す。

「解毒剤を溶かしてきました」

「更に強い毒ってことは」

 もうここでは誰も信用できない。 

 ミアがもしかしたら私を確実に殺すために、解毒剤といって毒を入れているのかもしれない。よく知らない人から渡された飲み物をむやみに口にするのは良くない。

 ……私ってば疑い深くなってしまっているわね。

 ミアは私の言葉に眉間に皺を寄せながら口を開く。

「そんな戦争を起こすような馬鹿なことを私はしません。……あ~、もうっ!」

 ミアは私が持っているコップを奪い、目の前でゴクッと一口飲んだ。

「これで毒が入っていれば、私も死にます」

 私は彼女のその行動に呆気にとられて、思わず笑ってしまった。

 本当に助けようとしてくれてるのね。あんなに監視していたのは、もしかしたら私が殺されないように見守ってくれていたのかもしれない。

「ちょっと笑ってないで早く飲んでください」

「疑ってごめんなさい」

 私はなんとか笑いを止めて、彼女から貰った水を飲んだ。

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― 新着の感想 ―
そこはそんな直接的でなくて「身体がしびれるほどの味だった」とか貴族的嫌味を。 そしてどんな毒かは残った食事から分析したのかな? 初めは万能解毒薬かと思ったけど、ちゃんと特定したんだろうね。 「これ…
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