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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「アリシア、貧困村のジルを魔法学園に入学させる事が出来たぞ」

 あの話し合いから数日して、お父様が私にそう言った。

 やったわ! 早速ジルに知らせに行かないと。

 そうだわ、ジルには私が悪役を演じるって伝えてもいいのかしら。

 ジルは私の助手って事になっているのだし。

「お父様、ジルには私がリズさんの監視役になった事を言っていいのですか?」

「ああ、その少年はお前と常に行動してもらわなければならないからな。それとこれを渡しておく」

 そう言ってお父様は私に小さな瓶を渡した。

 中には薄ピンク色の液体が入っている。

「これは何ですの?」

「それを飲めば貧困村にある霧の壁を通れるんだ」

 ああ、そういう事ですのね。

 お父様はやっぱり壁があることをご存知なのね。

「有難うございます」

 私はお父様にお辞儀をして去ろうとした。

「アリ、後悔はしていないか?」

 ……後悔?

 私は今凄く幸せですわ。

「全くありませんわ」

 私は笑顔で答えた。お父様は眉を八の字にして、そうか、と呟いて去って行った。

 どうしてお父様がそんな顔をなさるのかしら。

 やっぱり愛娘の事が心配なのね。

 大丈夫よ、お父様、私は最高に満足しているわ。


 日が暮れた頃に私は貧困村に向かった。

 この森の不気味さも本当に今じゃ全く平気よね。慣れって凄いわ。

 霧をくぐり抜けて私はウィルおじいさんの家へ向かった。

 すると、ガシッといきなり誰かに足を強く握られた。

 一瞬で背筋が凍った。私は足元に視線を落とした。

 やせ細って汚れた手……。

 細い手なのに力強く私の足を掴んでいる。

「た……、たす……、けて」

 か細い声が私に訴えかける。

 女性の声だわ。

 体から鼻がつぶれそうなぐらいの異臭を放っている。

 思わず手で鼻を覆ってしまった。

 ここの強烈な悪臭に慣れていても、この臭いはきついわ。

 私の足にしがみついている手を私はどうすればいいの。

 悪女は感情で動かないわ、理性で動くのよ。

 悪女ならこの状況をどうするのかしら……。

 私は頭をフル回転させて考えた。

 悪女は自分より弱いものを傷つけないわよね?

 だって、弱い者には優しく、強いものには厳しくってよく言うじゃない。

 だからリズさんにも強く当たるのよ。

 そうよ、私は今この女性を助けてこそ悪女よ。

 私はその女性の手を掴んだ。

「大丈夫ですわ」

 そう言って女性の体を持ち上げた。

 普段鍛えているんですもの、お姫様抱っこぐらい朝飯前ですわ。

 ……それにしてもあまりにも軽すぎますわ。

 私より年上に見えるのに、私よりも随分軽い。

 生きているのが不思議だわ。

 私は駆け足で噴水がある広場に向かった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >悪女は感情よりも理性で動く 逆ゥ!!!
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