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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 ミアという女性はさきほどデューク様を衛兵との争いから救った侍女だった。

 背が高く、ベリーショートヘアのスレンダーな体型の女性だ。……私の知っている侍女とは違い随分とカッコいい。

 部屋を案内されるため、私たちは彼女の後ろを歩く。

 ……さっきから随分とジロジロとみられている気がする。敵意や殺意に満ちたような視線を全身で浴びる。

 デュルキス国の者たちって分かられたからかしら……?

 魔法学園の時の冷たい目とは全く違う。あの時の皆の態度が可愛らしく思えてきたわ。

 他国の者がこの王宮にいることがそんなにも不快なのかしら? 

 けど、残念ね。私はちっとも堪えない。悪女たるもの、いつでもどこでも堂々としているのよ。

「アリシア、気をつけろ」

「全員敵だと思えってことですか?」

「ああ」

「……息が詰まる場所ですね」

「まぁ、王宮なんて心休まる場所ではないからな」

「アメリア女王様もデュルキス国でこんな思いをしていたんですか?」

 アメリア、という言葉に前を歩いていた侍女が微かに反応した。

 デューク様は少し間を置いてから口を開く。

「そうだな、快くは迎え入れられなかった。魔法を扱うデュルキス国は他国や異文化を排斥するような流れがある。魔法を持たない他国の人間が王妃になるのは想像を絶する苦労だっただろう。魔法至上主義である以上、母は肩身の狭い思いをする。……母は強い人だったが、王宮では冷たい目で見られていた。だからといって、もうメルビン国には戻ることなどできない。小さな檻の中で逞しく生きていたと思う」

 お母様のことがあったからこそ、デューク様はデュルキス国を実力主義に変えて行こうとしているのかしら。

 どこか寂しそうに話すデューク様を見ていると胸が痛くなった。

 嫁姑の相性が悪いのはよくある話だけど、規模が全く違う。弱音を吐きだせる場所すらもなかったんじゃないかしら。

 ……デューク様とともにメルビン国へと戻った際に毒殺された理由はなんなのかしら。

 だって、アメリア様はメルビン国の人間でしょ? デュルキス国でそんな残酷な事件が起きるならまだしも、それがどうして、母国で殺害なんか……。

「デュルキス国に魂を売ったと思われたのさ」

 私の考えていることが分かったのか、静かにデューク様はそう言った。

 デューク様の言葉が重く耳に響いた。

 愛する国を離れ、愛する国に殺された……。

 アメリア様のことを思うと、涙が出そうになった。なんて悲しい結末なのだろう。

 デュルキス国もメルビン国もアメリア様を守ってはくれなかった。

「あれほどこの国のことを愛していたのに、残念だ」

 デューク様のその呟きに私は心が張り裂けそうだった。

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