表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

644/710

644

 少しして、ヴィクターは口を開いた。

「そうだ。……来るか?」

 またまた茶化して~、と言おうと思ったがやめておいた。ヴィクターの瞳は真剣なそのものだった。

「本気なの?」

「ああ」

 嘘でしょ……。私、ラヴァール国に嫁ぐってこと? 

 こんな展開全く予想してなかった。もっと呑気に散歩しようと思っていたのに……。

 真っ直ぐ私を見つめるヴィクターの視線に私は「どうして」と擦れた声を出した。

 ヴィクターが私のことを嫁にしたいと思う理由が全く分からない。

「お前は皇后の器だ」

「……私の素質を見込んで、嫁に来てほしいということですか?」

「そういうことだ」

「まだ国王になることが確定ではないのに?」

「国王の座など関係なしにお前には俺の隣にいてほしい」

 そういえば、昔ヴィクターにそんなようなことを言われたことがあるわね。

 というか、ヴィクターの話が一貫していない。私の皇后としての素質を見込んでいるのに、国王の座が関係ないって。……どういうこと?

 ヴィクターの考えていることが分からない。めちゃくちゃじゃない。

 けど、どれだけ言われても私には揺るぎない想いがある。

「素敵なお誘いだけど、私の隣はもう決まっているの」

 私は口角を上げて、彼の目を見つめながら確かな声でそう言った。

 良い誘いだけど、私の心はデューク様の元にある。これは決して変えられない。

「知ってるさ。…………あ~あ、お前、こんな千載一遇のチャンス逃すのかよ。馬鹿な女だな」

 小さくボソッと呟いた後に、ヴィクターは明るい声でそう言った。一瞬だけだけど、ヴィクターは凄く寂しそうな表情をしていたように見えた。

「そもそも、私のこと好きじゃないのによく結婚しようなんて思えるわね」

「王族っていうのはそういうもんだろ」

「やっぱり楽しくなさそうね。王族って」

「そうだな。……良いことといえば、圧倒的な権力を持っているってことぐらいじゃないか?」

「なんか嫌だわ」

 私は目を細めて、軽蔑するようにヴィクターを見た。彼は「嘘だよ」とまた豪快に笑う。

 そして、近況や他愛もない話を少しの間して、私は部屋へと戻った。

 久しぶりに穏やかな良い時間を過ごしたわ。今夜はよく眠れそう。



「本当にお前は不器用だな」

 庭園に一人残されたヴィクターの元へとヴィアンが現れる。

 ヴィアンを横目で確認した後、ヴィクターは「うるせぇ」と返す。

「アリシアを好きならちゃんと愛を伝えないと」

「そんなんじゃねえんだよ」

 ヴィアンはヴィクターを見つめながら、小さくため息をつく。

 ヴィクターにとっては初めての失恋だ。だが、彼にはその自覚はない。ただ、アリシアに対してどこか寂しく切ない気持ちが残っているだけだ。

「あいつには厄介な王子がいるからな」

 ヴィクターが口を開く。

「引き抜き失敗ね」

 ヴィアンはそう言って優しく微笑んだ。いつもならヴィクターは反抗するところだが、今夜は違った。

「そうだな」

 その声は静かに夜空に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ