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「それで部隊名は?」
「……まだ考えていなかったわ」
リガルの言葉に私は部隊名を頭の中で色々と候補を出す。
部隊名って大体名前からとってくるわよね……?
アリシア隊はダサいし……、ウィリアムズ隊? いや、身分剥奪されているんだったわ。
「う~~ん、何がいいかしら。好きな食べ物とか? マカロン隊とか……」
「絶対やめた方がいいです」
レオンが即答する。それにすぐさまリオとリガルが頷く。
私はチェッと口で舌打ちをして、また新たに考える。
ネーミングセンスあまりないということを自覚している私が決めてもいいのかしら。
やめておいたほうがいいわよね。みんなの意見も聞いてみた方がいいに決まっている。
「なにか候補は?」
私がそう言うと、三人とも難しい表情を浮かべた。
「パワー隊とか?」
「ダサいだろ。主の魔法はたしか闇魔法だから……ダーク隊?」
「かわいい隊長だから、かわいい隊はどうですか?」
おっと、みんなネーミングセンスが絶望すぎたわ。
全員、他の能力が優れているかわりに、ネーミングセンスは圧倒的に欠陥しているみたい。
リガルとレオンとリオの案は全て却下よ、却下。
「なんかもっとインパクトのある名前はないのかしら」
「インパクト……っていっても、これ表だって活動しない部隊だろ?」
「そうね、陰の部隊というか……」
それを言いながら自分で陰の部隊を持っている私ってあまりにも悪女すぎない!? と思っていた。
闇の組織を動かす私! 良いじゃない!! ダークな噂を沢山まわしてもらいましょ。
「なんか変なこと考えているだろ」
リガルが私を訝し気に見る。私はすぐに顔を無に戻した。
ついにやけてしまっていたわ。
「やっぱり、ダーク部隊が一番よくないですか?」
「なんか痛くないか?」
「じゃあ、お前なにかいい案が出せるのか?」
「……ラヴァール国とデュルキス国からとって、ラヴァキス部隊」
なんか気持ち悪いキスみたいな名前になってない?
「俺、メルビン国なんだけど」
「知るか。ここはラヴァール国なんだよ」
「その二ヵ国で部隊が形成されているみたいだろ。もっとグローバルな名前を考えたらどうだ?」
「てめぇ」
レオンとリガルってもしかして相性が悪い……?
二人が睨み合っている中、リオの声が響く。
「主様のなにか思い入れのある言葉からつけるのはどう?」
この可愛い少年のおかげで場が緩むわ! ありがとう、リオ!
……思い入れのある言葉、と言っても特にないのよね。古語とかになると、ややこしいし。……思い出から導きだそうかしら。
「…………フェニックス」
私はそう呟いた。
ウィルおじいさんの葬儀の際、彼は最後に不死鳥となって空高く消えた。それをふと思い出した。
「フェニックス、いいですね。最強部隊って感じがします」
「なんかまだダセぇ気もするけど、一番マシか」
レオンとリガルの言葉にリオが「不死身の部隊!」と付け加える。
これ以上の部隊名がここから出てくるとは思えない。私たちが話し合えば、話し合うほど酷い名前ばかりがでてきそうだもの。
「フェニックスで決まりね!」
今日、この小屋で私が率いる部隊「フェニックス」が誕生した。
国が認めた正式な部隊ではないけれど、私たちは世界を揺るがすような強い部隊を結成した。
この部隊名誕生秘話は後にヘンリお兄様の私に関する書物で記載されて初めて世に知れ渡ることになる。




