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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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『盗賊が去った後は?』

 私がそう聞くと、キイは楽しそうに話し始めた。

『その少年、魔法が使えたそうよ。ほんの小さな魔法だけどって言いながら、光の花とかを見せてくれたんだって! クシャナ、凄く嬉しそうにそのことを話してくれて、私たち妖精まで幸せな気持ちになったの』

 一般的に十三歳になれば、貴族は魔法を使うことができる。それに五大貴族のフィン様なら、それなりに魔力も安定しているだろう。

『少年はクシャナが何者か問わなかったの?』

『名前だけ聞かれたみたいよ。それ以外は何も』

『できた子ね』

 私は幼いフィン様に感心した。

 可愛い顔をしているが、たまに垣間見れる大人な雰囲気……。

『……もしかして、二人が出会ったのってその一夜っきり?』

 キイは首を縦に振った。

『たった一夜の夢だったって』

 クシャナがそう言っていたのだろう。

 少しだけ胸が締め付けられた。フィン様は幼きクシャナにとって安らぎであったに違いない。

『それ以降は女王としての責務に真剣に向き合って……、常によ? 休む暇もなく、この森をよくしようとした』

 一体、この森や民たちはどんな状態だったのかしら……。

『クシャナは全てに応えていたわ。大人や老人たちもクシャナに頼りっきりよ? 信じられる?』

『それほどクシャナは信頼されていたのね』

『そういう言い方もできるけど……、きっとそれが苦しくてたまらない時期もあったに違いないわ』

『……それでも戦ってきたのね。強い人ね、クシャナは』

『強くならざるをえなかった』

 私の言葉をキイは静かに訂正する。

 私はクシャナのことを想った。当時の彼女の境遇をこの深い意識の中でゆっくりと思考を巡らした。

 頼る者もなく、頼られる存在になった。あのクシャナだもの、きっと、弱音なんて吐いたりしなかったんでしょうね。

 ……けど、もしかしたら、誰も見ていない場所で枕を濡らしていたのかもしれない。

 自由から最も程遠い立場が「女王」だもの。自分のことよりも民の方が優先順位が高いのよ……。

 クシャナは良い女王だった。それは少しここで過ごしただけの私でも胸を張って言える。

『ねぇ、キイ』

『なに』

『もう、この民の皆がクシャナを忘れているって、ものすごく悲しくて切ないわね』

 いつの間にか、私の目からとめどなく涙が流れていた。

 クシャナが私に「つらい役目を押し付けた」と言った意味が分かった気がした。

 民の誰もがクシャナのことを忘れているのよ。彼女が歯を食いしばって進んだ道で民たちが幸せに過ごしていたことを誰ひとり知らない。

 女王としてのクシャナをこれほど覚えていてほしいと思うことになるなんて……。

 全てを捨ててでも、自由を手に入れたかったのだろう。

『クシャナの選んだ道よ』

 キイは優しい声でそう言って、小さな手で私の涙を拭ってくれた。

『民は彼女が女王の座を譲ることをきっと許さなかったわ。だから、民に忘れてもらうのが一番だったの』

『…………どうして、クシャナは若くして女王になったの?』

 私は涙を止めながら、ずっと気になっていた質問をした。

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