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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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『どれぐらい怖いもの知らずだったかというとね、クシャナが十二歳の頃、あの子デュルキス国に一度入ってるのよ』

 キイの口から出た言葉を理解するのに数秒かかった。

 ……クシャナがデュルキス国に? なんですって? ……不法入国?

 頭の中がぐちゃぐちゃになる。いくら自由と言えども、そこまでするなんて……。

『あれは、女王になるって決まった日の夜だったわ』

 キイのその言葉に少しだけ納得できた気がする。

 これから縛られ続ける人生を考えると、逃げ出したくなったのかもしれない。

 それに十二歳で女王って、一体どうなってるのよ、この森は!

 キイに聞きたいことが多過ぎるけれど、順番に彼女の話を待った。

『よく、ラヴァール国を出れたわね』

『そうよねぇ……』

『なによ』

 言いにくそうにしているキイを睨む。

 ラヴァール国とデュルキス国を繋ぐ国境は、私が国外追放者として通ったあの検閲所のだけだった気がする。

『ちょっとした抜け道があったのかもしれないわねぇ』

 キイが目を逸らしながら呟く。嘘が下手くそなのか、それとも隠す気がないのか……。

『何があったの。答えなさい』

『ん~~~、別にアリシアは敵じゃないから言っても……』

『言いなさい!』

 私はキイの小さな頬っぺたを両側からキュッとつねる。キイはキュッと目を瞑り、声を上げた。

『いった~~い!! 暴力反対! もうそれなら言わないもん!』

『言って!』

 キイの顔に私の顔を近付ける。私より数倍小さい顔にこれほど顔を近付けたら、迫力はなかなかのものだろう。

『こわッ、圧! 分かった言うわよ!』

 キイがそう言った瞬間、私はニコッと微笑み両手を離した。

『う~~、強引なんだから~~』

 キイは両頬を撫でながら、涙目で私を見る。

 謎を謎のままにしておいて、自分で探し出すのもいいのかもしれないけれど、キイに隠し事されるのは少し癪に障るんだもの。

『この森を熟知している人間――つまり、クシャナしか知らないのだけど……。この森はデュルキス国に続く地下道があるのよ』

『地下道!?』

 思わぬ新情報に思わず変な声が出てしまう。

 そんな情報聞いたことがないわよ……。ずるすぎない? クシャナは森を知り尽くしていて、たまたま見つけたってこと?

『驚いて当然よね。きっと、この世界で知ってるのはクシャナだけだもの』

『どういうこと?』

 クシャナって実はとんでもなく重要人物だったんじゃ……。

 私は今更になってクシャナの凄さを噛みしめている。頭がパンクしそうだけど、もっとクシャナについて知りたいって興奮している自分がいる。

『魔法を持つデュルキス国はなかなか脅威的な存在だからね。大昔、誰かが作ったんだと思うよ』

『それをどうしてクシャナが知るのよ』

『……私たちのせいよね。クシャナを愛しすぎて、人間が知り得ない情報を教えちゃったのよ』

 私が呆れた表情をキイに向けると、へへッと気まずそうに笑みを浮かべた。

 そして、言い訳のように話を続けた。

『だって、あの日クシャナはひどく沈んでて……、妖精の私たちには感じ取れたの。クシャナは女王になることを望んでないって。それで、長く使われてなかった地下道の近くにクシャナが来たから……。ここから逃げ出せるよって伝えちゃった』 

 最後にテヘッと舌を出すキイに思わずデコピンしたくなった。

『伝えちゃった~、じゃないでしょ。クシャナが素晴らしい人格の持ち主でデュルキス国は救われたってわけね』

 そんな道があるなら、ラヴァール国を侵略しようと思えば、出来たかもしれない。

 ……そんな悪党じゃないから、妖精から愛されているのだろうけど。それにしても、そんな誰でもラヴァール国とデュルキス国を行き来できる道があるなんて恐ろしい。

 頭を抱えたかったが、キイの話を最後まで聞くことにした。

 どうせ、現実の私はまだまだ目覚めないんだから、時間はたっぷりあるわ! 

『それで……、どうなったの!』

 私は次の物語が待ちきれない子どものように、キイに聞いた。

『鎌を持つ少女は強かったのよ』

 彼女はそう言って、顔を綻ばせた。

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クシャナだいぶ重要だー
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