63
お父様の部屋の扉の前に着いた。
なんだかこの感じ、嫌な予感がするのよね。
私はお父様の部屋を軽くノックしてから入った。
……もうなんだかこの展開に慣れてしまって驚かなくなったわ。
私はいつも通り国王様に挨拶をした。
「アリシア、久しぶりだな」
「はい、三年ぶりでございますわ」
「随分大人っぽくなったな」
国王様はそう言って微かに微笑んだ。
むしろ三年も経って大人っぽくなっていない方が問題だわ……、それがゲーム内のアリシアなのだけど。
というか、五大貴族様が皆集まって私に何の用なのかしら。
この展開になる度に理由を考えるのだけど、毎回予想外な事を言われるのよね。
もう理由を考えるのはやめましょ。
何を言われてももう驚かないわ!
「アリシア、異例だが十三歳で魔法学園に行く気はないか?」
ジョアン様が私に向かってそう言った。
え?
前言撤回だわ、物凄く驚いてしまった。
実は、私てっきり魔法のレベルを聞かれるのかしらって少し思ってしまったのだけど、全く違ったわ。
つまり二年も早くリズさんに会えるって事? 行くに決まっているじゃない!
「行きますわ。行かせてください」
「そうか」
私の言葉にお父様が困惑した表情をした。
というより、どうして皆様そんなに難しい顔をなさっているのですか?
やっぱり少しは謙遜も必要だったのかしら?
でも悪女は謙遜なんてしないもの。チャンスがあるのなら必ず貰うわ。
「アリシアは今魔法レベルをいくつまで習得しているんだ?」
あら、この質問、さっき考えていたものだわ。
私は満面の笑みを作った。悪女はやっぱり自慢気に言わないとね。
「レベル80ですわ」
……もっと凄いって顔をしてくださっても構わないのですよ?
さっきよりさらに眉間に皺を寄せないでくれます?
思っていた反応と違うわ。
驚いているのは若干伝わりますが、私は褒めていただきたいの。
お父様なら喜んでくれると思いましたのに、その顔は何ですか……。
「80……」
ネヴィル様が蚊の鳴くような声で呟いた。
もっと大きな声を出して驚いて欲しいですわ。
「聖女と同じレベルだ」
……聖女? 誰ですの?
聖女って大概の乙女ゲームではヒロインの役よね?
という事は、もしかしてリズさん?
私、リズさんと同じレベルなの!?
やったわ! これで対等よ!
私は出来るだけ表情に出さないようにして心の中で喜んだ。
「アリシア、我々からの頼みを聞いてくれるか?」
「頼みですか?」
お父様がジョアン様を睨む。どうして怒っているのかしら。
「勿論断ってくれても構わない」
「分かりましたわ」
五大貴族の頼みを断ったりしたら、私、国外追放か死刑になりそうな気がするのですが。
「キャザー・リズの監視役をして欲しい」
国王様が口を開いた。
私は今の国王様の言葉を理解できなかった。
えっと、どういう事ですの?