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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 その瞬間、私はリガルの元へと飛んだ。

 目の前にライネルの槍の先端が現れる。私はそれを見事にリガルを抱えながら避けた。間一髪のところでリガルと地面に倒れて、ライネルの攻撃から彼を守る。

 私が突然現れたことに驚いているライネルと目が合う。「どうしてここに」と言いたげな表情とともに、ライネルが槍を持つ手に力を込めなおしたのが分かった。

 気を抜けない相手、と判断されているのは嬉しいわね。

 リガルの方を見ると、私をじっと見つめながら口をパクパクさせている。

「本当に……、呼んだら、来た……」

 まだ火災が起きる前に、森でこの魔法をかけておいて良かった。

 この魔法がなければ、リガルの元へと来れなかったもの。……私が教えたデュルキス国の古語を忘れていないかと少し焦ってはいたけれど。

「邪魔するのか?」

「リガルがたとえ殺される運命だったとしても、その相手は貴方じゃないもの」

「……クシャナ様は確かにこいつを殺そうとしていた。俺はその意に従っているだけだ」

「それなら、クシャナがリガルを殺すべきよ」

 私はそう言いながら、その場に立ち上がる。お面のせいでライネルの考えていることはしっかりとは分からないが、私に対しての良い印象を抱いていないことは分かった。

 ……クシャナとは仲良くできそうだけど、彼女の親衛隊とはどうもそりが合わないみたいね。

「それとも個人的な恨みが彼にでもあるの?」

「…………俺はクシャナ様の為に」

 会話にならないじゃない。

 盲目的な信者……。そういえば、デュルキス国でもそんなことがあったわね。リズさんの周りも大変な人たちばかりだったわ。

 どこの国でも人間という生き物はあまり変わらないのね。

「リガル、彼と戦いなさい」

 リガルの方を見ずに、私は彼に向かってそう言った。え、というリガルの戸惑いの声が聞こえた。

 確かにここに来たのは、リガルを助けるためだ。……助ける、というよりも捕獲という方が正しいかもしれない。

 けど、この状態のままリガルだけを攫っていくわけにもいかない。精気を完全に失った彼なんて面白くないもの。

 私に対して向けてきたあの熱量はもう残っていないのかしら……。

「散々休憩したでしょ。とっとと歯向かいなさい」

 私はライネルからリガルへと視線を向ける。先ほど地面に倒れ込んだ衝撃で、髪が乱れており、彼の顔の火傷がよく見える。

 ……悪くない。

 私はニヤッと笑みをこぼした。

「その不名誉な勲章を役立てる日がついに来たじゃない」

 リガルを煽るようなかたちでそう言った。彼は私の言葉にピクッと小さく眉を動かす。リガルは地面に手を突きながら、グッと拳を握った。土が彼の手の中へと埋まり込んでいく。私の言葉に怒りを抑え込んでいるのだろう。

 私はその様子を見ながら、更に煽るような発言をする。

「村を火の海にするより、ライネルと対戦する方が楽でしょ?」

 リガルは私を怒りの混じった冷淡な目で睨む。その場の空気が一変するほどの迫力だった。

 これを聞いているライネルでも、「流石にそれはいいすぎだろ」となっているだろう。

「うるせえよ。……もう俺は疲れた」

 ………………疲れた?

 リガル、貴方、「疲れた」なんて言葉を私に向かって発したの?

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