表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

620/710

620

「アリシアにはとても感謝している。……だが、ここは譲れない」

 クシャナはそう言って、私から鎌を離して、リガルの方へと向かった。

 ……速い! 

 その動きに私はまた転移魔法を使い、先回りした。

 私の体力はもう底をついているというのに、クシャナと戦うなんて御免だわ。

「どくんだ、アリシア」

「嫌よ」

 短剣を構えて、クシャナの攻撃を私は受け止める。彼女は容赦なく、続けて鎌を振る。機敏な動きに私も必死に短剣でかわす。

 こんな重いひと振りを毎度してくるなんて、本当にどんな馬鹿力なのよ!

「リガル、逃げなさい!」

 私はリガルに向かって、叫んだ。私の声に反応して、リガルは立ち上がり走り出す。

 ……良かった。

「余計なことを」

「クシャナ、一体どうしたのよ!」

 私はクシャナと交戦しながら、彼女に話しかける。何か理由があるのなら、聞きたい。

 これ以上、この戦いを長引かせたくない。

 私の短剣が彼女の攻撃を受けて、段々と砕けていく。……この威力を毎度受けていたら、短剣がもたない。

 少しずつだが、鎌を振る手つきがぶれるクシャナに違和感を抱く。私はクシャナをじっと見つめた。

 ………………クシャナ、どうして泣いているのよ。

 瞳から落ちる一筋の涙に私は動きを止めた。クシャナは私が動きを止めたことに驚いたのか、私に当たりそうになる鎌の軌道をずらし、鎌の先端を地面へとぶっ刺した。

「何があったの」

 クシャナの強い瞳が寂しさに覆われていた。

「……リリバアを殺した。だから、リガルも同等に扱わねばならん」

「ど、うして……」

「けじめだ。今回、死者が数名でた。中には子どももいた」

 クシャナの声が少し震えるのが分かった。クシャナが守り抜いてきた場所に火を放ったが、それでも、クシャナにとってあの老婆は大切な存在だったのだろう。

 育ての親を自分の手で罰した。

「彼女が自ら死を望んだのね」

 あの老婆がしたことが、どれだけ大きな罪だったとしても、クシャナはきっと老婆を守りたかったはずだ。

 クシャナは何も答えない。

「……悪いのは全部シャルルでしょ?」

「あいつにはもっと苦しんで死んでもらう」

 クシャナは二人ともシャルルに騙されただけだと分かっている。

 だけど、老婆を殺した以上、リガルにも筋を通さねばならないと考えているのだろう。

 クシャナの気持ちは痛いほど分かる。けど……。

「前回も死者が出たんだ」

 私が表情を曇らせたのを察したのか、彼女は静かにそう言った。

 郷に入っては郷に従え。私には何もできない。…………そういえば、ライネルは?

 私はハッと彼の存在を思い出し、周囲を見渡した。

 どこにもいない!!

「ライネルがいないわ!」

 私の言葉にクシャナもその場を首を動かして、周りを確かめる。

「……リガルを追ったのだろう」

 まずい、このままだとリガルはライネルに殺される。

 もし、仮にリガルが殺されるとしても、その相手がクシャナでないと意味がない。

 転移魔法をまた使おうと思ったが、リガルの場所が分からない以上、行きようがない。

 ………………どうしたらいいのよ。

「アリシア、私はどうすればいいのだ?」

 クシャナの口から発された言葉は私と同じ疑問だったが、きっと意味合いが違う。

 彼女は自分の進むべき道を見失った目をしていた。

 私は初めて見る彼女の姿に言葉を失った。いつも余裕があって、完璧な女王の姿しかしらない。

 ……クシャナを抱きしめたい。大丈夫だと言って励ましたい。

 けど、私はそんな励まし方を知らない。だって、悪女なんだもの。誰かを甘やかしたりなんてしない。

 私はスゥッと大きく息を吸って、声を出した。

「シャキッとして! 貴女はまだここの女王なのよ!」

 パチンッとクシャナの頬に平手打ちをした。突然の出来事にクシャナは目を丸くする。

 逃げ場を与えたかった。私がいる前だけでは泣いてもいいと言いたかった。

 だけど、それだとダメなのよ。

 もう女王でなくなるクシャナには、最後まで女王として輝いてほしかった。私のエゴでしかないけれど、彼女はこの森に君臨している女王なのだと胸を張っていてほしい。

 大切な人を失う気持ちはよく分かる。クシャナの場合、自分の手でその人の命を奪っている。

 想像できないほどの辛さがそこにはあるのだろう。……だけど、私は彼女が逃げることなんて許さない。

 非道だと思われたとしても、クシャナにはその尊厳を守り通してもらう。

「どうすればいい? そんなことも分からないの? 貴女が守りたいものを全力で守りなさい!」

 この場に私の声が強く響いた。

「リガルのことを殺したければ、殺せばいい。……過去を蒸し返すのは貴女の勝手よ。けれど、リガルにとって最も苦しいことは『生きている』ことよ。むしろ、老婆はこの世を去って、冷たい目を向けられる人生を免れて良かったかもしれないわね。それに、私にとっては、リガルの気持ちなんてどうでもいい。彼が苦しもうが私の人生にはちっとも関係ないもの。だけど、クシャナには、…………この森を、村人を、誰よりも愛し、守り抜いてきた女王には、自分を見失った状態で誰かを裁いてほしくない」

 言いたいことを全て言い切った。

 クシャナは目を見開き、私を見つめていた。私はそのまま勢いで大きな声を出した。

 時間はない。急がないと!

「リガル!! 叫びなさい!!」

 どこまでも届くほどの声量だった。これほどの声を出したのは初めてかもしれない。

『アリシアをここに』

 デュルキス国の古語が脳内で響いた。

読者の皆様へ


いつもいつも読んで頂きありがとうございます!!

凄く幸せです!!♡


アニメは見て頂けたでしょうか??

原作と違うところが、またいいですよね~~!♡

もう終わっちゃったのが寂し過ぎますね、、、。


今年も本当にありがとうございました!

皆様に支えられて、今年も元気に頑張ってこれました~!

良いお年をお迎えください~~!♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
クシャナぁ!頑張れぇ!あなたはまだ女王だぁぁ! あけましておめでとうございます! 2025年も、「歴史に残る悪女になるぞ」執筆頑張って下さい! 僕、「歴史に残る悪女になるぞ」がすっごく大好きで、アリ…
物凄い場面でデューク様、アリシアの事呼び戻そうとしてますか?アリシアにはデューク様の側にいて欲しいと思ってますけど今、色々立て込んでます。それに今のアリシアの見た目はボロボロなのでデューク様青筋立てる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ