表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
603/634

603 十六歳 ウィリアムズ家長女 アリシア

「クシャナだ。この森を治めている」

「……この場所はラヴァール国の管轄よ?」

 ヴィアンはクシャナが発した言葉に違和感を抱いたのか、顔を顰める。

 クシャナは何も言わない。そんな彼女にヴィアンはますます顔が険しくなる。

 確かに、この話を掘り下げていくとややこしくなりそうだわ。……てか、リガルは?

 私はふと、さっきまで一緒にいた男のことを思い出した。

 火が見えて大慌てでこっちに来ちゃったけど、彼、まだあそこにいるのかしら。

 いや、その前に犯人捜し?

 自然に燃えたとは思えない。絶対誰かが火を放ったんだわ。……けど、この村にそんな反乱者はいないはず。

「この俺を無視するのか?」

 気付けば、ヴィアンが最初に出会った時の冷徹王子モードに入っていた。

 ……こうしてみると、とんでもなく男前のイケイケ王子様ね。

 私はクシャナとヴィアンの険悪な空気に飲み込まれながら、そんなことを考えていた。

「今までこの森のことを見向きもしていなかったのに、ラヴァール国のものだとよく言えたものだ」

「……ここに人が住んでいるのは資料で知っていた。だが、まさかここまで豊かな文化を持った部族がいるとは思わなかった」

「もてなす前に、全て燃えてしまったがな」

 クシャナは皮肉っぽくそう言って笑った。

 彼女の様子にヴィアンは「お前たちなら、またすぐに復興できるだろう」と返す。

 ヴィアンがちゃんと男口調になっているの、ちょっと違和感だわ。

 ……ヴィヴィアン状態に慣れてしまいすぎた。

 ヴィアンは凄惨な村の状態を眺めながら、更に言葉を加えた。

「私も手を貸そう」

 クシャナは首を傾げる。

「……お前がいてこの場所が成り立っているのであれば、私はそれに手を加えたりしない」

 分割統治、という言葉が頭に浮かんだ。

 かつてウィルおじさんが国王様に出した案だわ。……却下されてしまったのだけど。

 ヴィアンの思考に私は少し胸が熱くなった。

「……礼を言う」

 クシャナは短くそう答えた。その表情はどこか寂しさに覆われていた。

 ……そうだわ。クシャナはもうすぐ女王ではなくなる。それも戴冠のようなものではない。彼女は忘れさられてしまう。

「おねえちゃん、おばばが変なの」

 私はさっき助けた小さな女の子にスカートを裾を引っ張られた。え、と私は女の子へと視線を移した。

「ほら、あそこ」

 私は女の子指差す方を見た。

 …………ちょっと、あの老婆、崖から飛び降りるつもりじゃないでしょうね。

 今にも落ちそうな老婆が視界に映り、私は硬直した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ