600
「まさか、国王から連絡が来るとは思わなかったがな……」
おじい様の後に三賢者のケイト様とマーク様も口を開く。
「私たちも必死に君のことを探したのだが、全く見つからなくてね」
「ヴィアン王子とヴィクター王子にも伝えて、内密に動いてもらっていたんだよ。……そしたら、山が突然、燃えだしてね」
「もしかしたら、ここにいるかもと思ったのよ」
ヴィアンがそう付け足した。
よく私が燃えているところにいるって思うわね。……確かに、本当にいたんだけど。
気付けば、体の痛みは随分と引いていて呼吸もしやすくなった。体力をかなり消耗したせいで、多少の気だるさは残っているけれど、ほとんど回復したと言っても過言ではない。
おじい様も魔法能力が高くて助かったわ。
私はその場に立ち上がり、グッと背を伸ばす。
「うっ、まだ痛いわ」
私は軽く痛みが走る左腹部を抑える。おじい様はその様子を見て、呆れたようにため息をついた。
「当たり前だ。暫くは安静にしておきなさい」
「……分かりました」
私は素直におじい様の言葉に返答する。
「それにしても、まさか魔力を融合して、水魔法を使うとは……。前代未聞だ。恐れ入ったよ」
ケイト様は私の方に近付き、驚いた様子で私をまじまじと見つめた。
ああ! 見て下さっていたのね!
先ほどの私の魔法の凄さを分かってもらえる人がいてくれて良かったわ!
私は思わずガッツポーズをしてしまう。
誰もしたことのない挑戦をちゃんと成功させたのだから、もっと褒めたたえてくれてもいいのよ?
もし、これが学園での出来事だったら、生徒全員驚きでひっくり返っても良いぐらいの魔法技術よ?
私は心の中でルンルンになりながら、それが顔に出ないように必死に冷静さを保っていた。
「いやぁ、見事だったな。アルベール、君の孫娘はまごうことなき天才じゃの」
マーク様は嬉しそうにそう言って下さった。
……三賢者に褒めてもらえるなんて、光栄だわ。
「アリシアって意外に凄いんだな」
「ちょっと、意外ってなんですか。それにヴィヴィ……ヴィアン王子、今更口調を戻したって、遅いですよ」
私がジトッとヴィアンを見つめると、彼は小さくどこか諦めたような表情を浮かべた。
「やっぱり?」
「ラヴァール国の第一王子か」
ヴィアンの言葉と被るようにして、クシャナが口を開いた。
……この二人、相性が悪そうね。
私は何も言わずに二人の様子を見守ることにした。




