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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「こんなのどうってことないわよ」

 私が笑いかけると、女の子の目から涙が零れ落ちた。私の額にポタッと水滴がつく。

 ポロポロと泣き出す女の子に「私、強い女なの」と微笑んだ。

「しな、ない?」

「ええ、死なないわ」

 死ぬほど痛いけどね。

 リガルに刺されたのが結構きいている。彼からの攻撃をもろに受けてしまうのは計算外だったわ。

 ……いや、今日の出来事に関しては全てが計算外だわ。

 もはや、このパーティーを楽しめたのは最初の数分じゃないかしら……。

「わたち、も、いつか、おねえじゃんみたい、に、なりゅ」

 女の子の嗚咽まじりの言葉を聞きながら、この子もいつか悪女になってしまうのか、と思う。

「じゃあ、涙を拭きなさい。強い女は泣かないの」

 私はそう言って女の子に涙を拭かせた。彼女は素直に「うん」と頷き、両手で涙を拭う。その姿は可愛らしかった。

「貴女が強い女なのは充分わかってるから、今すぐ治療してもらってちょうだい!」

 ヴィアンの強い口調がその場に響いた。 

 その口調、クシャナたちに聞かれてもいいのかしら。ヴィヴィアンがもろに出ているけれど……。

「怒ってる?」

 今度は私が抱きかかえられる側になった。ヴィアンが敵でないと分かったのか、クシャナの表情は少し緩んだ。

「当たり前よ! 勝手にそんな大怪我! アルベール!」

 ヴィアンが声を上げて、おじい様の名を呼ぶ。

 王子キャラを繕うことができないぐらい取り乱しているのだと思うと少し嬉しくなった。それぐらい私のことを心配してくれているのだろう。

「これはかなりやられたな」

 おじい様は私の元へとやって来て、私に治癒魔法をかける。

 闇魔法は治癒と破壊の魔法だ。完治まではかなり時間はかかるが、動ける程度にはすぐに回復する。

 紫の光が私の腹部を覆い、丁寧にナイフの破片を取り除く。

 宙に舞うナイフの破片を、もうすっかり泣き止んだ女の子が「すごい」と目を輝かせて見つめている。

 おじい様の魔法は一流だ。身を任せられる。 

「なんとか事態を収束させましたよ」

 私がそう言うと、おじい様は「大したものだ」と温かい声で私を褒めて下さった。

 それにしても、どうして、ここが分かったのかしら。

 私の純粋な疑問を察したのか、おじい様は説明をしてくれた。

「ルーク国王が連絡をくれたのだ。『アリシアがいなくなった』と。デュルキス国にいないとなれば、ラヴァール国の可能性が大きいと思ったのだろう」

「まって、国王様が!? デューク様でなく?」

 驚いたわ。

 まさか、国王様が私の身を案じてくれていたなんて……。

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