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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 私の言葉を聞いて、ハハッとリガルは頬を緩めた。

「アリシアがクシャナを大切に想っていることは真っ直ぐ伝わってくるよ」

 ちゃんと人を見る目はあるのかもしれない。

「貴方も、村だけじゃなくて、クシャナのことも守りたいっ想っているのは伝わってくるわよ」

 私がそう言い返すと、リガルは頬を赤くした。

 その瞬間、彼もまたクシャナのことを忘れてしまうのかとキュッと胸が押し潰されそうになった。

 この想いすらも消えてしまうのだろう。それはリガルにとっては大きな損失なんじゃないかしら……。

 本人は消えたことにすら気付かないのだろうけれど、感情はそんなに単純ではない。どこかで寂しい感情がうっすらと残るかもしれない。

「アリシア?」

 私が険しそうな表情をしていたのか、リガルは顔を覗き込む。

 ハッと我に返り、ダメダメ! と自分に言い聞かせる。今、ここで私がしみったれた空気を醸し出してどうするのよ。

 折角のクシャナの最後のパーティーを壊すわけにはいかないわ。

「パーティーに戻りましょ」

 私がそう言って、パーティー会場を振り向いた時だった。

 …………なにあれ。

 小さな炎が視界に入る。私は思考が真っ白になった。パーティー会場からこんなに歩いてきたのかという驚きがかき消されるぐらいに、さっきマカロンを食べていた場所から煙が燃え上がっていることに対しての衝撃が大きかった。

 焦げ臭いにおいが若干漂う。

 ここは森だ。火事なんて起これば、あっという間に火の海だ。

 ……故意的なもの? それとも偶然?

「村が……」

 リガルの小さな呟きに、私はハッと我に返り、気付けば全力で走り出していた。

 どういうこと!?

 一難去って、また一難どころじゃない。さっきまで、ほんのさっきまで、みんなで楽しく盛り上がっていたじゃない!

 走れば、振動で左腹部の傷が余計に痛む。まだ、ナイフの破片は取り除いていない。

 むしろ、止血してきているから、今はこのままの方がいいのかもしれない。……それにしても、めちゃくちゃ痛いわね。

 ふと、後ろをチラッと振り返ると、リガルはその場に座り込んだまま、目を見開いてパーティー会場の方を眺めていた。 

 ショックで放心状態になっている。

 ……リガルのことも心配だけど、今はこの炎をどうにかしないと。

 近くまで来ると火力が強くなるのが分かった。これはかなりまずい。今すぐ火を消さないと、被害は更に大きくなっていく。

 村人の泣き叫ぶ声が耳に響く。さっきまでとは打って変わった様子に私は思わず立ちすくんでしまう。

 …………どうしろっていうのよ。

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