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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「アメリアが羨ましかった。その強さを受け継いだお前も羨ましい」

 静かに言葉を発した父に俺は言葉を失った。

 たまに父が俺に向けている憧憬の眼差しは母を見る目と似ていた。

「ああ、でもアメリアとアリシアの方がよく似ているのかもしれないな」

 俺が何も言えない様子を父は察して、少し頬を緩めた。

 そうですね、と俺も微かに微笑み返した。

 父が心の底から母を愛していたのなら、俺の気持ちも分かるはずだ。最愛の人の行方が分からず、生存の安否もとれていないこの状況がいかに胸が張り裂けそうなのか。

「アリシアは無事だ」

「どうして、分かるのですか?」

「母がアリシアの魔力を持っているからだ」

「……はい?」

 俺は思わず眉をひそめた。

 なんだこの展開。祖母は何も答えていないのではなかったのか?

 混乱する俺に、父はゆっくりと説明しはじめた。

「身分剥奪だけでは生ぬるいと、少し懲らしめてやろうと思ったらしい。だが、魔力を奪っただけだそうだ。突然行方不明になったことに関しては何も答えない。……あの様子からして、アリシアが消えたことには関与していないのだろうが、母は責任を感じているのかもしれない。アリシアがいなくなったのは自分のせいかもしれない、と」

 ……アリシアの魔力を祖母が持っているのなら、アリシアの行方が掴めないのも納得がいく。

 毒魔法、敵に回すと厄介な魔法だ。

「祖母の元へ行きます。俺の魔法で引きずりだしてやる」

 いつまで悪人ぶっているのだ。

「……アリシアはそう簡単に死ぬまい」

 俺に対しての慰めなのか父はそう言ったが、その言葉に苛立った。

 アリシアのことになると、どうも冷静でいられない。

「人は簡単に死んでしまうものですよ。母上も……母国で処刑されたのですから」 

 そう発言してしまったことに少し後悔した。

 父が最も言われたくないことを口にしてしまった。悲嘆と屈辱が入り混じった表情を浮かべた。

 ……父は「アリシアが生きている」と自分にいいきかせていたのだろう。

 守るべき存在を守れなかった無念をぶつける場所がなく、その感情がいつ爆発してもおかしくない状態だ。

 だが、父は大人だった。

 感情を抑えて、「デューク」と俺の名を呼んだ。

「弱い王は弱いなりにできることがあるのだ」

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― 新着の感想 ―
デュークの母が母国で処刑されたとありますが、以前侍女に毒を盛られて亡くなった、と文庫1巻にありました。その侍女をデュークが殺して国王が隠蔽したはずです。侍女に毒を盛られたのが母国に里帰りしていた時とい…
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