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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「なんだ?」

 父は眉間に皺を寄せて、俺の方を見る。「いえ、なにも」と答えたかったが、やめた。

 アリシアなら、途中まで何か言いかけたのなら、全部言い切るだろう。良くも悪くも、はっきりと物を言う。

「父上は弱いです」

 俺は「反抗」というものをしたことはない。父にたてつくことなど考えたこともない。 

 国王という立場は常に頭を抱えるものだとずっと考えてきたが、これはただの親子喧嘩だ。

 そこに配慮は要らない。

「弱い、だと?」

 父は俺の言葉に片眉を吊り上げた。

 ……父は強い。

 発した言葉と心の中で思っていることは別だった。

 環境のおかげで「強くなった」という表現が正しいのだろう。伯父上や祖母、母の死によって、強くならざるをえなかったのだろう。

「デューク、お前も言うようになったな」

 やはり、国王といったところだ。かなりの重圧で俺に向けて言葉を放つ。

 この部屋の空気が一変した。緊張感で張り詰めた国王の書斎で、俺は軽く口角を上げた。

「己の弱みを隠すために、リズが存在しているわけではないです。……聖女がいれば、この国は安泰するという伝説に固執しているんじゃないですか?」

 俺がそう言うと、父は目を見開いた。図星だと言わんばかりの表情だ。

 違う、と小さな声が父の口から零れる。

 俺は更に言葉を付け加えた。父の態度に腹が立っているのだろう。少し感情的に言葉が出てししまう。

「アリシアはそれに利用されても構わないという姿勢でしたが、俺はそれを快く思っていなかった。『アリシアがいいのなら』と、目を瞑って来ましたが、今回の件は見過ごすことはできません。アリシアはどこにいるのですか?」

 父は深く息を吐いて、口を開いた。

「…………母は何も答えないのだ」

「どういうことですか?」

 無意識に顔を顰めてしまう。

 祖母はアリシアがいなくなったことに関与していないのだと推測している。……だからこそ、祖母は「知らない」と答えればいい。そう答えてくれると、一つ問題が解決に近付く。

 ……肯定も否定もしないとはどういうことだ?

「私にも分からない。なぜ母がそのような態度を取るのか……」

 祖母――ジュリーは性悪ではない。

「母がしたことはアリシアの身分剥奪だけだ。王宮爆破計画を立てたというのだから、私には彼女を擁護しようがなかった。……キャザー・リズの監視役にさせてからというものの、ウィリアムズ・アリシアを利用してきたのはちゃんと理解している。……だからこそ、今回は救いたかった。令嬢でなくなったとしても、彼女に居場所を作っておいてやりたかった。…………だが、私は、やはりお飾りの王なのだ」

 父は寂しそうに、どこか悔しそうにそう口にした。

 お飾りの王、それを自覚しているからこそ、王位という立場に殺されそうになった日もあるだろう。

 どれほどの精神的苦痛の中でその座を保持してきたのだろうか。

 ふと、父の苦労を考えた。

 俺がさっき父に放った言葉は、父は痛いほど理解しているだろう。

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