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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「本当の悪者は、俺がどれだけ敵意を向けたって、優しい顔して親密になろうとしてくるんだよ。お前みたいにナイフの破片を俺に向けたりしねえよ」

「またお前」

 私が軽くリガルを睨むと、彼は「アリシア」と小さく呟き訂正した。

 よろしい、と私はニコッと微笑んだ。

「媚を売っているわけでもない私をどうしてそこまで追い出したがるの?」

「悪い奴じゃないって分かっても、よそ者はこの村には要らない」

「危機管理能力が随分と高いのね」

 ……この森は、鎖国しているようなものだもの。

 他を拒絶するのも分からなくもない。……けれど、私はクシャナの客よ?

 だから、絶対に帰らないわ。……クシャナの客じゃなかったとしても、自分の意志でここまで来たのなら、居座ってやる。

「分かったら、とっとと出ていけよ」

「嫌よ」

 私は即答する。

 私ってば、聞き分けが悪いのよ。

「やっぱり、俺がやるしかないんだ……、この村のために、女王のために」

 そう言って、彼はギュッと地面に落ちているナイフの破片を握り、私の顔へ突き付けてきた。

 咄嗟の出来事に、私の動きが少し遅かった。リガルの攻撃は避けれたけれど、頬に切り傷が入った。

 ……浅い傷だけど、地味に痛いわね。

 私はそんなことを思いながら、リガルを見つめた。鬼気迫るような表情に私は思わずギョッとしてしまう。

 彼の信念は一体どこからきているのだろう。そこまで、前に訪れたよそ者は冷酷非道だったのだろうか。

 ナイフの破片を握りしめるリガルの拳から血が滴っている。私の頬の傷よりもよっぽど血が流れている。

 ……興奮で痛みも感じていないのかもしれない。

 彼はまた体勢を戻して、私へとナイフを向けて襲いかかってくる。ナイフの素早いスピードが響く。……これほどの動きをできるなんて驚きだわ。

 さっき、魔法でナイフを折られた時点で諦めたと思っていたのに……。

 フフっと思わず笑みがこぼれた。

 諦めの悪い人間は嫌いじゃない。存分に相手しようじゃないの。

 彼からの攻撃を俊敏にかわして、近くにあった木の棒を拾い、それを魔法で剣にする。

 昔、クシャナとの一戦でも魔法で小枝をナイフにしたことがあったわね。……もはや、懐かしい思い出だわ。

 ドスのきいた声が森に響く。

「よそ見してんじゃねえよッ!」

 私は一瞬で彼の後ろに回り、剣の先を彼の首に軽くつけた。

「勝負ありね」

 もっと戦おうと思っていたけれど、ナイフの破片と剣では圧倒的な差がある。それに、私にはそんなに時間がない。

「まだだ」

 私が気を少し抜いたのを察したのか、彼はクルッと私の方を振り返り、身を低くして、こちらに突進してきた。

 嘘でしょ、私はそう小さく声を出して、彼の攻撃をもろに受けた。

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