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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 ……どうして、ずっとついてくるのかしら。

 本人はバレないつもりでいるのか、さっきの男が後ろからつけてきている。

 他の人も怪訝な目で私を見つめている。目の前の豪華な食事に手をつけたいのに、あまりにも熱い視線を彼から向けられているせいでか、気になってしょうがない。

 私はこのパーティーから少し離れて、静かな森の方へと足を進めた。

 …………この男は一体どこまでついてくるのかしら。 

 見た目も怪しいし、どう見ても変質者だわ。この森以外だったら、捕まっているわよ?

 私はどんどん賑やかな場所から距離を取る。それなのに、私のことを追ってくる足音だけは変わらない。

 こんな分かりやすいつけ方ある……?

 私が言うのもなんだけど、もう少しうまくやってほしいわ。

「一体いつまでついてくる……の」

 私が振り向くと、男はナイフを私に向けていた。まさかの展開に思わず、声が薄れてしまった。

 周りは木々で囲まれており、遠目にパーティー会場が見えるぐらいだった。人々の声も随分と遠くなった。

 …………殺意のこもった目。

 私に対して良い感情を持っていなかったのは理解していたけれど、まさかナイフを持っているとは予想外だったわ。

「俺はお前を殺す」

「ちょっと、そこまで恨みを買ったおぼえはないわよ?」

 さっき会ったばかりじゃない。

 よそ者がクシャナのパーティーに参加したってことがそんなにも重罪?

「お前を殺したいと思っている者は何人か他にもいる。俺がその代表だ!」

 声を張り上げるその男に、「私、何かした?」と純粋な疑問を投げかける。

「この森を守るためだ」

 迷いなく、男はそう答えた。

「守るため?」

「ああ。外の者は信用できない」

 ……まるで過去になにかあったような言い方だ。

「お前らは友好的に見せかけて、最終的に裏切るだろう?」

 私は裏切らないわ、と言おうと思ったがやめておいた。口だけなら何とでも言える。

 今のこの状況じゃ、私がなにを言っても信用してもらえなさそうだし……。

「無害な女だということを証明するには何をすればいい?」

「今すぐこの村から去れ」

 男のナイフを握る手が微かに震えている。どこか怯えているようだった。

「残念だけど、それは出来ないわ」

「何故だ?」

 前髪で顔が隠れてはいるが、眉間に皺を寄せたのは分かった。

「私はクシャナに恩があるの。それを返すためにここにいるのよ」

「お前が返す恩などしれているだろ。お前がいなくなった方がこの村のためだ。この村に干渉するな! 早くここから消えろ!」

 何をそんなに恐れているのかしら。

 私は不思議に思いながら、私にナイフを向ける男の方へと近寄っていく。

 自分の方向に来るとは思わなかったのか、男は「来るな!」と叫ぶ。……それはナイフを持たない私の台詞じゃない?

 私はそんなことを思いながら、男との距離を詰めて、足を止めた。

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