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魔法を扱えなくなった少年……。
ベッドの上に倒れて天井を見ながらその少年の事を考えた。
彼はまだ生きているのかしら。もし生きているのなら会ってみたいわ。
ウィルおじいさんと同い年くらいなら生きている可能性は十分あるわよね。
問題はどうやって探すかよ。
アルバートお兄様……、よりもお父様の方が知っている可能性は高いわ。
それに明日アルバートお兄様は学校でお屋敷にいないものね。
けどそんな簡単に教えてくれるのかしら。
いくら私に甘いお父様でも無理な気がしてきたわ。
とりあえず明日の朝にでも聞いてみましょ。
私はそのまま眠りに落ちた。
「アリシア、起きなさい」
お父様の声で目が覚めた。
お父様が私を起こしにくるなんて一体何事かしら。
私はベッドから出て、急いで着替えて部屋を出た。
「どうしましたの?」
「アリシア、お前に話がある」
お父様は真剣な顔つきでそう言った。
なにかしら。全く見当がつかないわ。
お父様が歩き出したので、私は黙ってお父様の後ろを歩いた。
どこにいくのかしら。その前に私、何かしたかしら……。
もしかして貧困村に行っている事がとうとうバレたのかしら。
お父様が向かった先は、私が今まで入った事のないお父様の部屋だった。
ここに連れて来られるなんて私本当に何をしたのかしら。
私はお父様に続いて中に入った。
……また国王様?
確かに若干国王様のフラグは立っていたけれど……。
五大貴族のトップが全員揃っているし……。
本当に何事?
闇魔法はしょうもない魔法が多いから五大貴族から外させるとかそんな話かしら。
けどそれならお兄様達もいるはずよね?
「アリシア、久しぶりだな」
「お久しぶりです、国王陛下」
私はそう言って深くお辞儀をした。
なんだか圧迫面接みたいね。
「アリシア、君は魔法が使えるのか?」
「はい」
私の魔法の話だったのね。
昨日の今日でもう国王様が私に会いに来るなんて、どれだけ情報早いのよ。
「何かやってみてくれないか?」
私は軽く指をパチンッと鳴らした。
物を積む魔法で本が次々と浮かんでいき積まれていく。
大きな部屋なのに、本やら紙やらが散らばっているんですもの。
綺麗にしたいと思ってしまいますわ。
本が積まれた後に大量の紙が積まれた。
前より少し高いタワーが出来た。
ちゃんと安定して端が整っているわ。上出来!
「綺麗に積まれている」
「ああ、どこもはみ出ていない」
「最初はこんなに綺麗に出来ない」
ジョアン様とネヴィル様とデレク様が次々と私の魔法に成績をつけるかのように言った。
今のテストでしたの?
「これは……」
国王様がタワーを見ながら言葉を失っている。
「アリシア、有難う」
お父様が私に笑顔でそう言った。
アルバートお兄様と笑顔がそっくりだわ。その裏のある笑顔。
その笑顔に促され私はそのまま部屋を出た。
なんだか朝から気持ち的に疲れたわ。
剣のお稽古でもして体を動かしましょ。
アランお兄様とヘンリお兄様がいる庭へ向かった。
私はすっかり魔法が使えなくなった少年について聞く事を忘れてしまっていた。