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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「クシャナの記憶を消すってこと?」

 鼓動が速くなるのを隠しながら、私は静かにそう聞いた。

 クシャナは夕日を見ながら「いや」と答えた。私は思わず「え?」と首を傾げる。

「この森の民から私の記憶を消してほしい」

 …………クシャナが人々の記憶から消える?

 私は何も言えなかった。こういう時、なんて言葉をかけるのがいいのか分からない。今、私が抱いている感情も自分で理解していない。

 混乱状態に陥っている私にクシャナは口を開く。

「私という存在を消して欲しいのだ」

「…………どうして?」

 分かった、とすぐに承諾できなかった。

 クシャナはただ黙って空を眺めている。私もそれにならい、空を眺めた。さっきよりも日が沈んでいて、あたりは少し明るさを失っている。

 心地いい風が吹き、私はスゥッと新鮮な空気を体内に取り入れた。落ち着こう。

 クシャナはモリスを撫でて、彼を眠らせる。クシャナの手の中で、モリスはいつの間にか眠りに落ちていた。

「私はもう女王としての役目を終わらせたいのだ」

「終わらせる?」

 さっきからクシャナの口から想定外の言葉が出てきて、私の脳が追い付かない。

 クシャナは女王として生きることをもうやめたいの?

 また、「どうして」と言葉が出そうになった。だが、グッと言葉を吞み込む。

 根掘り葉掘り事情を聞き出されるのは、クシャナは嫌だろう。

「ああ、もう女王は飽きた」

「飽きた?」

 さっきから、クシャナの言葉をオウム返しばかりしている。

 てか、飽きたってなに!? 「飽きた」って一言で、女王はやめれるものなの? ……いや、だから、記憶を消してほしいって頼んでいるのか。

「シーナはどうするの?」

 私は彼女が何か答える前に、質問をした。 

 クシャナの姉のシーナはクシャナをとても信頼している。シーナからも忘れ去られるなんて、あまりにも辛すぎる。

 大切な人に忘れられる苦しさにクシャナは耐えられるの?

 私は心の中でそう思いながら、ジッとクシャナの方を見つめた。彼女の瞳はもう覚悟を決めた目をしていた。

「シーナは次期女王となる」

 話がどんどん前へと進んで行っていて、私はつい頭を抱えた。

 もう、何がなんだか分からない。

 私はキイの世界に飛ばされて、そこからまたラヴァール国へと飛ばされた。キイとクシャナは知り合いで、クシャナの願いを叶えようと私はここにいる。

 その願いは、クシャナの記憶を人々から消す……?

 なによ、それ。クシャナは男女ともに愛されている立派な女王じゃない。強さも優しさも賢さも、まさに理想の君主なのに……。

 クシャナがいなくなれば、森はカオス状態に陥るわ。

「アリシア、そう深く考えるな」

 私の眉間に皺が寄っていたのか、彼女は私の眉間を人差し指で軽く押した。

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