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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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562/710

562 十六歳 ウィリアムズ家長女 アリシア

 ………………ここはどこなのだろう。

 目が覚めたら知らない場所にいた、という展開はよくあるだろうが、目が覚めると違う世界にいた、という展開はあまりない。

 私は違う場所、ではなく、違う世界にいる。

「さっきまで、部屋にいたはずなんだけど」

 私はそう呟きながら、体を起こしてその場に立つ。

 状況を把握する為に私はその場でぐるりとあたりを見渡す。

 まるで雲の上にいるみたい。けど、見下ろしても別に下界が見えるわけでもない。ただ果てしなく底が続いているだけだ。

 神秘的な場所。…………私はこういう世界を知っている。

 人生で二度、こういう場所は経験したことがある。一度目は妖精をとりに行った死到林。二度目はウィルおじさんと戦ったクシャナの森。

 だから、今、自分がこのよく分からない世界にいても取り乱さずにいられる。

 ラヴァール国での経験が今の冷静沈着さを生み出しているのなら、それだけで国外追放された甲斐があったかもしれないわね。

 この状況を作り出せて、私を攫うとしたら一人しか考えられない。

「キイ」

 私は彼女の名をゆっくりと呼んだ。

 私の言葉に反応したかのように、目の前がパッと光る。あまりの眩しさに私は一瞬目を細めた。

 キイの魔力を感じた。その光の温かさには身に覚えたがあった。

 やっぱり、と心の中で呟いたのと同時に怒り口調のキイの声が聞こえた。

「アリシア! いつまで私のことを放置してるのよ」

 目を開けると、そこには頬を膨らました小さな妖精の姿が目の前にあった。

 これは相当怒っている……。

 てか、デュルキス国にいる私を別空間に移動させるって凄い技術ね。

「忘れたの? 私はラヴァール国の王様が欲しがっていた妖精だよ?」

 私の考えていることを察したのか、彼女はふてくされながらそう言った。

 本当にすっかり忘れていた。斑点病の治療やら、ウィルおじさんのお葬式やらで忙しかったから、キイのことが脳から抜けていた。

「ええ、忘れていたわね」

 私は特に申し訳なさそうな表情もすることなくサラッとそう言った。

 すぐにバレるような嘘をついても意味がない。

 キイは私のことを見つめながら、妖精とは思えないほど美しくない表情で口を開く。

 化け物を見るかの目を向けられている……。失礼な妖精ね。

「信じらんない!」

「ヴィクターやヴィアン、キイにも構っていられないぐらい私の身の周りで色んなことが起きていたのよ」

「だからって、妖精の私をこれほどまでに雑に扱う?! そんな人間、アリシアぐらいだよ!」

「あら、ありがとう」

「褒めてない! 怒ってるの! 早くラヴァール国に帰ってきて! 私、本当にあのヴィクターとかいう男の王位のために利用されちゃうよ!」

「逃げれば良いじゃない。キイならあの城から逃げることぐらい朝飯前でしょ?」

 私がそう言うと、キイは眉間に皺を寄せながら私を睨んだ。

「誰かさんに制限魔法かけられたせいで、自由に逃げることさえできなくなったのよ!!」

 キイの大きな声が耳にキーンと響いた。

 あ!!!

「忘れてたでしょ」

 キイは険しい表情で私に顔を近付けてくる。物凄い気迫だ。

「そういえば、どこかへ逃げないようにそんな魔法をかけたわね」

「そういえば、じゃないの! あの魔法のせいで私がどれだけ迷惑をこうむっているか!」

「…………早く戻るわ」

 静かな空間の中、私は確かな声でそう発した。

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