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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 俺は気持ちを落ち着けて、フッとメルに笑った。 

 彼女の言葉で少し心が楽になった気がする。メルは絶対に俺を裏切らない。その信頼が彼女にはある。

「助けの要らない俺は今お前に何を頼めばいい?」

「それは主ご自身でお考え下さい」

 メルは俺と目を合わせながら、挑むような表情でそう言った。

「……ジルをラヴァール国へと行けるように手配しろ。身分を与えられる方法があるなら探せ」

「御意」

 彼女は静かに頭を下げて、その場から消えた。

 ジルの一件は丸々彼女に任せよう。メルは優秀な部下だ。それに、周りをよく見ている。

「感謝する」

 誰もいなくなった部屋でそう呟いた。

 俺はアリシアの一件に集中しよう。…………となると、まずは祖母か。

 同じ王宮にいるが、あまり顔を合わせたことがない。というか、彼女自身この王宮にはいるがほとんど表に出てこない。ずっと離れで過ごしている。

 祖母と会うのはあまり気は進まない。しかし、アリシアの行方の手がかりが少しでも手に入るのなら会うしかない。

 俺は祖母に会う前に父の元へと向かった。

 長らく父と話していない。……父は王宮が燃えていたことをどう処理しているのだろうか。祖母がこの事件の解決に関与していたことは知っているはずだ。

 それでもう丸く収まったのなら、何も口出すつもりはないということなのかもしれない。

 相変わらず、父は祖母には逆らわないのだろう。

 父のいる書斎へと着き、コンコンッと扉を叩く。

「父上、俺です」

 格式張った挨拶などはしない。

 部屋の中から「入れ」という言葉が聞こえてくる。国務が忙しくとも、きっと父は俺が訪ねればいつでも時間を空けてくれる。

 扉を開けて、部屋へと入る。

「珍しいな、デュークが私の元へと訪ねてくるのは」

 父は笑いもせずに厳格な雰囲気のままそう言った。

 国王としての威厳はしっかりとある。ただ、素質はやはりウィル伯父上の方があったのだと思う。

「…………先日、王宮が爆破されかけたのはご存知ですよね?」

「ああ」

 父は渋い顔をしたまま答える。

「その犯人がウィリアムズ・アリシアだということも?」

「ああ」

「父はどのような処置を?」

「この件は母上に一任した」

「何故です?」

 思わず表情を歪めてしまう。どうしてもアリシアのことになると、感情が大きく揺さぶられてしまう。

 俺は追い打ちをかけるように口を開いた。

「父上は、お飾りの国王ではないでしょう? 国王はこの国で最も権力を持つ者です。貴方がアリシアを裁くべきだった」

 父は少しの間黙り込み、小さくため息をつく。父はゆっくりと俺の方へと視線を向けて、射貫くように俺をじっと見つめた。

「私が裁いて本当に良かったのか?」

 その言葉は部屋に重く響いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] これからはジル君の大活躍の場面ですね! 敬語を使っているメルはとても物珍しい気がします。私は、なんだかんだ言いながら女の子のキャラの中でメルが一番好きかも!
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