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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「良い目だ」

 デュークはニヤッと微笑み、興味深そうに僕を見る。

 どうやら一国の王子様の気を引けたようだ。

「どんな利益をこの国にもたらしてくれる?」

 デュークは僕を試すように口を開いた。

 斑点病の治療薬を相手国に渡すというのは大きな交渉だ。ウィンウィンな状態か、デュルキス国が有利になるような状態じゃないと意味がない。

 そうでないと、この国の名を背負ってラヴァール国へと赴けない。

「デュルキス国にもたらす利益は……」

 僕はそこまで言って、言葉を止めた。

 パッと何も出てこない。僕は必死にその場で考える。

 デュークが納得するような言葉を言わなければならない。

 …………この国にとって最も今欲しいものはなんだろう。

 この事についてちゃんと考えたことがなかった。いつもアリシアのことばかりで、国益についてしっかり考えてこなかった。

 魔法学園にいる時に授業で学ぶぐらいだ。

「貧困村……」

「ん? 貧困村がどうした?」

「軍事開拓するって言ってたよね?」

「ああ」

 自分の声が段々大きくなるのが分かる。

「もしかしたら、デュルキス国をラヴァール国と並ぶぐらいの大国にできるかも」

 言葉にしながら、思考をまとめていく。

「デュルキス国にとって魔法が軍事力の成長の弊害となっていたんだ。だからこそ、軍事力をある程度固めることができれば、大国になるかもしれない」

「貧困村を軍事開拓しようとしているんだ」

「けど、どうやって? 資金があっても、兵を育てるノウハウは今のまま? 兵士の強さは明らかにラヴァール国よりも劣っている。更に、数も圧倒的に違う。へっぽこな軍事力を蓄えても意味ないんじゃない?」

「つまり何が言いたい?」

「兵の育て方をラヴァール国から教えてもらうんだ。屈強な軍の養成場を築きたいのなら、既に最強の軍を持っているところから学ぶのが一番手っ取り早い」

 デュークは僕の言っている事に納得したのか、暫く黙り込む。

 僕を本当にラヴァール国にデュルキス国の代表として送り出すのか迷っているのだろう。

 平民じゃなくて、僕は更にその下の貧困村出身の者だ。そんな人間をデュルキス国代表として他国との外交に使うのは難しい。

 デュークがいくら偉くても、その許可には反対派も沢山いるだろう。

「……その交渉をジルができるのか?」

「できるできないの問題じゃなくて、するしかないんだよ」

 僕はそう言い切った。

 交渉成立しなければ、僕は首を飛ばされる。

 そのくらいの覚悟で友人であるデュークに頼み込んでいるのだ。

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