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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 その言葉で僕は察した。

 アリシアはここを去る前の最後の言葉をレベッカに託したのだ。あの部屋にも、どこにもアリシアからのメッセージはなかったが、レベッカだけはそれを持っていた。

 魔法を使えなくなることを察して、最後にレベッカにそれを伝えにきて、消えたのかもしれない。

「ずっと、いつ伝えようか迷っていたんだけど……」

 レベッカは少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 僕はすぐさま、「いや」と彼女の言葉を否定した。今がまさにアリシアの言葉を受け取る最高のタイミングだった。

 レベッカはずっと僕と二人になる瞬間を探していたのだろう。

「ありがとう」

 僕がそう言うと、彼女は表情を緩めた。

「ジルが最も愛している人は、この世界で一番かっこいい人だよ」

 レベッカはそれだけ言うと、この場を去って行った。

 本当にアリシアの言葉を伝えにだけ、ウィリアムズ家に来たのだ。

 このキラキラした世界にまだ居場所を見いだせていない彼女が一人でこの場所に足を運ぶのはどれほどの勇気だっただろう。

 本当はネイトを同行させたかったはずだ。

 ……けど、僕と二人にならないとアリシアの言葉は伝えられない。

 レベッカ、やっぱり君はアリシアに認められた救世主だったね。

 



「デューク! 僕をデュルキス国の名を借りてラヴァール国へと行くように手配できない?」

 目が覚めてすぐに王宮へと向かった。

 王子にこうも簡単に面会できる平民は僕ぐらいだろう。

「…………ラヴァール国?」

 彼は眉をひそめながら隣国の名を口にする。

「そう。僕、ラヴァール国に行かなくちゃいけないんだ」

「もしかして、アリシアの居場所が分かったのか?」

 彼は身を乗り出すように僕にそう聞いた。

 僕は首を横に振り、「まだ分からない」と口にする。彼はその言葉に露骨に残念そうな表情を浮かべた。

 アリシアがいなくなることはデュークにとって絶望なのだ。

「けど、僕は自分がすべきことが分かった」

 これは僕にとっては大きな一歩だ。右往左往していた僕に、道が開かれたような気がした。 

 後は道を頑張って開拓していくだけ。

「何か掴めたんだな」

「アリシアが僕に対して抱いている望みを知れたんだ」

「それは良かった」

 デュークは僕に微笑む。

 どうやって知れたんだ、とはデュークは聞かない。そこがデュークの好きなところの一つでもある。

「ラヴァール国で何をするんだ?」

「外交だよ。僕がこの国の制度を変えてみせる」

「ほう」

 さっきまで、アリシアのことで取り乱していたデュークの表情が一変する。

 面白そうだ、と言わんばかりの表情を僕に向ける。その興味の目を向けられている間に、僕は自分をデュークに売り出さなければならない。

 元々、僕の能力は買われているが、もっとこの国にとって有力な人材であることを示したい。

「大国と言われているラヴァール国に対等に交渉できる武器が今デュルキス国にある。……それが、斑点病の治療薬だ。ラヴァール国では多くの者が斑点病にかかっている。国力を維持するためにも、斑点病の治療薬を必ず欲する。魔法の使えない僕が、ラヴァール国との交渉に成功すれば、必ず制度を変えることができる。鎖国するのであれば、魔力を持つだけの無能が上に立っていても、デュルキス国は繁栄はせずとも滅びることはない。だが、外交となれば違う。この国の無能が露呈されれば、未来はない」

 こんなことをはっきりと言うなど、本来なら、不敬罪だ。

 だけど、デュークになら、ちゃんと僕の想いを伝えることができる。

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