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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 たしかにヘンリの言うとおりだ。

 アリシアが今もし誘拐されていたとしても、死ぬはずなどない。

 むしろ、そういうの喜んじゃうタイプだもんね、アリシア。令嬢という立場を失った方が良いぐらいに……、言い過ぎてはいない。 

「明日戻ってこようが、数年後戻ってこようが、俺はアリシアを待ってるよ」

 ヘンリは昨日アリシアと会話してから、一皮むけた気がする。気概が変わったような……。

「数年後って……」

 アランの戸惑う気持ちも分かる。数年後なんて、あまりにも先過ぎる。

 特に僕やデュークがそんなにも待てるはずがない。アリシアは死なないと確信しているけれど、絶対に探し出してみせる。

 なんだか不思議な気分だ。

 アリシアがいないと僕らの物語は動き出さないとどこかでずっと思っている。現代のデュルキス国にとって、主人公はウィリアムズ・アリシアなのだ、と。 

 だから、彼女がいなければならない。行方不明なんて許さない。

「地の果てまで探してやる」

 ボソッとそう呟く僕にデュークは「同じく」と小さな声で応えてくれた。

 僕は冒険するようなタイプではない。学ぶことが好きだから、体を張ってアリシアを守るようなことはできない。けど、僕の頭脳はいつだってアリシアのものだ。

「大げさに捉える事件でもないわね」

 アリシアのお母さんが口を開いた。

 その言葉で場の雰囲気が変わった。アリシア行方不明事件の行く末はレイラの判断で決まる。それぐらい彼女には貫禄があった。

 アリシアのお母さんって、本当に大事な時にしか発言しないんだ……。だからこそ、言葉に重みがでるのかも。

 母は強し、って台詞をなんかの本で読んだことがあるけれど、本当にその通りかもしれない。

「あなたたちは自分の仕事に戻りなさい」

 彼女は近くにいた使用人たちに声を掛ける。ロゼも「はい」と頭を下げて、すんなりとレイラに従う。

「殿下、アリシアがウィリアムズ家の者ではなくなったことは公にしてくださっても構いませんが、行方を晦ましたことはどうかご内密にしていただけますでしょうか?」

「ああ、約束する」

 アリシア、君のお母さんは凄いね。

 レイラとデュークのやり取りに僕は素直に感心していた。

「母上!」

 レイラの決断が気に入らなかったのか、アランが彼女に向かって叫ぶ。

「アラン、貴方はもっと他にすべきことがあるはずよ。学園で女の子に現を抜かすのも良かったけれど、もっと勉学に励みなさい」

 ……おっと、これはかなりパンチの効いたお言葉。

 アランは口を閉ざす。これ以上、言い返しても、自分が負けることを悟ったのだろう。 

 僕は母の存在を知らないけれど、アリシアのお母さんはとても良い母だ。

「きっと、私はこの家族の中で一番アリシアを信じているわ」

 澄んだ女性の声は綺麗に僕の耳に届いた。

 アリシアの母が実はウィリアムズ家を操作しているのではないだろうか。

「まぁ、アリシアなら確かに大丈夫だろ。……黒い薔薇はアリシアに微笑んでいるからな」

 アルバートはレイラの言葉を後押しするようにそう言った。

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