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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「アリシア~~!!」

 屋敷中でアリシアの捜索が始まった。

「お嬢様~~!」

「アリシア様!」

「アリ!!」

 誰もがアリシア探しに必死になったが、どこにもいない。

 ヘンリと一緒に貧困村にも行ったが、見当たらなかった。最終手段でデュークに頼った。

 アルバートがデュークの元へと行って、事情を伝えに言ったのと同時にデュークはすぐにウィリアムズ家へと飛んできた。

 デュークすらアリシアの行方を知らないとは、もうどうしようもないじゃないかと内心苛立っていた。

 少しだけデュークはアリシアの居場所を知っているのかもしれないと期待していた。

 アリシアを見つけるという希望がどんどん薄れていく。このまま、帰ってこないかもしれないと悪い方向へと物事を考えてしまう。

「デューク王子、わざわざお越しいただきありがとうございます。アリシアが行方不明でして……」

「ああ、アルバートに大体のことは聞いた」

 アーノルドもデュークもとても焦っているに違いないのに、少しも表情に出さない。

 二人とも冷静沈着で、大人だと思った。

 屋敷に訪れたデュークの元へと皆が集まる。アリシアのお母さん――レイラもデューク様に挨拶をする。

 普段デュークの身分などあまり意識せずに会話しているけれど、こうしてみるとやっぱり、デュークは一国の王子なのだと実感する。

「あ!」

 僕はデュークの方を向いて声を出した。

「アリシアのネックレス! あれにデュークの魔力がこめられているんじゃ」

 僕が最後まで言い終わる前に、デュークの表情で察した。

 もうそんなことは試していたようだった。試して、アリシアの気配を感じ取ることができなかったのだろう。

 一瞬でそう悟った僕は、また暗闇の中へと突き落とされた。

 昨日までいつも通り、アリシアと同じ空間にいたのに……。

 今、ここにアリシアがいないということが、どんどんアリシアの存在が遠のいていっているように感じた。

「…………本当にどこに消えたのアリシア」

 僕の悲痛な呟きにデュークは乱暴に僕の頭を撫でた。

「安心しろ、俺が必ず見つける」

 見つけ出してみせる、とデュークが自分自身に言っているようにも聞こえた。

 けど、それほど頼りがいのある言葉はないと思った。デュークという最強の男がいるのなら、アリシアは見つかるに違いない。

 この状況にヘンリはハハッと小さく笑った。

 切羽詰まった雰囲気の中、それは異質なもので、その場にいた全員がヘンリへと視線を移した。

 よくこんな状況で笑えるね、と言おうと思ったが、その前にヘンリが口を開いた。

「まさか、消えてしまうなんてな」

「おい、この深刻な状況分かってるのか?」

 アランがヘンリを睨む。

「ああ、分かっているよ。アリシアが行方不明。どこで何をしているかも見当がつかない」

 ヘンリは楽しそうにそう言う。

「分かっているなら、なんでそんな能天気なんだよ」

「だって、アリシアが死ぬはずなどない」

 ヘンリの低い声がその場に響いた。

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