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チュンチュンという、鳥のさえずりで目が覚める。
なんとも優雅な朝の迎え方だと思うだろうが、ここは牢獄。
デューク様は私と少し会話した後、この場を去った。一緒にいると言ってくれたが、私が帰らせた。
流石に一国の王子を牢で過ごさせるわけにはいかないでしょ……。それも自分の王宮の牢だもの。
「ふぁ~~~」
私は大きくあくびをしながら、両手を天井に向けて伸ばす。
なんだかスッキリと朝を迎えられている。
ジュリー様とは対面することができたし、デューク様にも想いを伝えることができた!
この国でしなければならないことはした気がする。……リズさんとの対決はまだ終わっていないけれど。
リズさん、元気でやっているのかしら……?
ジュリー様とのことでいっぱいで、すっかり彼女が今何をしているかなど考えていなかった。
「おはようございます」
「ジェーンの……」
私がそう言って、柵越しに衛兵の方へと視線を向けると、彼は笑って「バーナルドと申します」と名を教えてくれた。
縁とは不思議なものだな、と思う。
ジェーン同様、バーナルドともこれから関わることはないだろう。それなのに、出会えて良かったと思う。
「これから、また戦いが始まるのね」
私が腹を括ったのと同時に、バーナルドは口を開いた。
「ジュリー様からの伝言です。この事件は明るみになるが、ウィリアムズ家の子息が関わったことはなかったことにしておこう。それに、五大貴族ウィリアムズ家の評判も守ろう。ウィリアムズ・アリシアが全て責任を取り……」
そこでバーナルドは話すのをやめた。
私はこの僅かな沈黙に心臓の音がうるさくなるのが分かった。それぐらい、バーナルドの口から出る言葉に緊張していた。
何か言いたかったが、言葉が喉に引っかかって何も出てこない。「早く教えて」というのと同時に、「なにも言わないで」という気持ちもあった。
……良いことなのか悪いことなのかも想像ができない。
正直、ジュリー様の考えていることは未だに掴めないから。
長い沈黙を破るようにバーナルドはもう一度口を開いた。
「五大貴族という身分を剥奪する」
…………………………ついに私は爵位を失った。




