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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 私って、本当に令嬢なのかしら……?

 牢で過ごすことに何一つ抵抗のない自分を少し不思議に思ってしまう。

 冷たい地面に座りながら、鉄格子の窓を眺める。……もうすぐ夜が明ける。

 部屋から出ると、デューク様はもうそこにはいなかった。私が自分の魔力で抵抗したことを知って、もう呆れてしまったのかもしれない。

 今までずっとデューク様に助けてもらっていた。それを今回は初めて裏切った。

 けど、これでようやく私は巣立てた気もする。巣立ったけれど、戻るべき場所はデューク様のところ。それでいい。

 少しだけ寂しいけれど、どこか心はスッキリしていた。

 デュルキス国でやり残したことはもうない。心おきなくラヴァール国へと旅立てる。

「アリシア様」

 私がぼんやりとしていると、柵越しに衛兵の一人に声をかけられた。

 ジュリー様のお付きの衛兵だ。この牢は王宮の中の厳重なセキュリティの元にある場所なのだろう。

 …………ジュリー様によって捕らえられた者だけが入れる場所とか?

「なに?」

「デューク王子がアリシア様にお会いしたいと……、ですが、私はジュリー様に止められていまして」

「なら、ジュリー様の仰っていることに従うべきだわ」

「あの形相は……この牢を壊す勢いでして」

 私は思わず固まってしまった。

 デューク様ならやりかねない。笑ってはいけないのに、吹き出してしまいそうになった。

「会うしかなさそう?」

「それが一番丸くおさまるかと」

 私は少し考えた。

 デューク様に想いを伝えた後に、こんな形で会うの……?

 王宮の牢での再会はなんだか気が引ける。本当は私も会いたい。……けれど、会って何を話せばいいの か分からない。

 デューク様のことだから、私を責めたりはしないだろう。けど、怒っていることには違いない。

 そもそも王宮を燃やしにいったのだから、激怒していても不思議ではない。デューク様を信じているけれど、今回の私の行動はそうでないと捉えられても仕方がない。

 そんなことを考えていると、少し肌寒くなってきた。

 …………あ、デューク様だわ。

「どうなさいますか?」

「……会うわ」

 本来なら、「会わない」という選択をした方が良い。そんなことは分かっている。

 けれど、私は明日、もしかしたら本当に殺されるかもしれない。そんな日の夜ぐらいは、好きな人に会っても許されるだろう。

 ……ジュリー様が私を殺すとは到底思えないけれど。

 もしかしたら、明日で気が変わるかもしれない。人の気持ちは一番変わりやすいもの。

「承知いたしました。……それと、アリシア様」

「ん?」

 まだ話があるのかと、思わず首を傾げて衛兵の方を見る。

「ありがとうございました」

 そう言って、彼は頭を下げた。

 私はその様子に驚く。まさか、感謝されるとは思ってもみなかった。

 私が牢に入ったことに対して……!? …………そんなわけないわよね。

「ジュリー様がずっと背負っていた十字架が少しだけ軽くなった気がします。誰にもジュリー様を救えることなどできないと思っていました。ルーク国王もジュリー様の癒しになっても、救うことなど不可能でした。……それをアリシア様がなさってくださいました」

「私は……」

 そんな大したことをしていない。

 ウィルおじさんの日記を読んで、気になったことを解消したいがために動いたのだ。だから、自分のために動いたとしか言いようがない。

 ジュリー様のためにジュリー様に会ったのではない。

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