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キャロルも確か毒魔法だった。弱いけれど、非常に珍しい属性。
あと少しで何か分かりそうなのに……!!
今まで培ってきた知識をちゃんとアウトプットできなければ、身についたとはいえない。これまで読んできた全ての書物の内容を覚えているわけではないけれど、後少しで何か思い出せそうなのよ。
「毒魔法、魔力、…………破滅した魔力は身体にとって毒となる」
魔力を全て失ったウィルおじさんの話を聞いて、昔、それについて調べたことがある。
前例がほとんどない事象だったけれど、過去にもウィルおじさん以外に失った貴族がいたという歴史は存在した。
共通点としては、全員「天才」として認定されていた。……そして、十年以内に魔力を失ってからこの世を去っている。早死にしたんだ、と当時は何も考えずに思っていた。
もしかして、ジュリー様は……。
「本当に嫌な女ね。……脳内お花畑で容姿端麗の女の方が好きだわ」
ほんの一瞬だけリズさんが浮かんだが、私はすぐに頭の中で彼女の存在をかき消した。
きっと、ジュリー様は私の情報を持っていたのと同様、リズさんのことも調べていたのだろう。
「誉めてあげるわ。貴女が私の元へ辿り着き、こうして会話できていることを」
ジュリー様はそう言って、ゆっくり私の方へと振り向いた。
かなり歳はとっているけれど、かつての美貌が分かるほど綺麗だった。「おばあちゃん」という感じがない。
今もなお、気高く生きているのだということがその表情から分かった。真っ直ぐ私を見る瞳があまりにも強くて、負けてしまいそうだった。
私もなかなかの経験をしてきたけれど、たかが十六年生きた小娘がこの人に敵うはずなどない。
「魔力、学力、更に剣術も卓越していて、なおかつその容姿。才色兼備でありながらも、驕ることはない。学園の評価ほど当てにできないものはないわね。……高慢で嫌な女はここまで来れないもの」
……しっかりと褒められた。
私はそれに驚く。彼女の言葉には皮肉も嘘もなかった。
「ジュリー様は、ウィルおじさんの命を守ったのではないのですか?」
私の質問に彼女は自嘲する。
そこには命を救ったが地獄へと突き落とした、という意味が込められているように思えた。
「毒属性の私は、相手の身体にある毒を見ることができる。彼の目は魔力を失った時点で身体に毒を放ち始めていた。……私にとって彼は目障り以外なにもなかった。魔力を失ったのに、その賢さでルークと同じ土俵にいるのだもの」
「ジュリー様は、そんな理由でウィルおじさんを陥れるほど馬鹿な女ではないでしょう?」
ウィルおじさんに対しての優しさを捨てたことが、最も優しい選択だった。
同じヒールとして、ジュリー様の気持ちは察することができる。
「…………だから、貴女に会いたくなかったのよ」
彼女は諦めたようにボソッと呟いた。そして、また窓の外へと視線を向けた。
ロアナ村を見つめながら、彼女はいつも何を想っていたのだろう。
こんにちは! 大木戸いずみです!
いつも読んで頂きありがとうございます!!
皆様のコメント全て読んでおります。本当にありがとうございます。
歴悪の報告ではないのですが、大木戸が原作の作品「公爵家の野生児だけはやめておけ」がコミカライズ化しました!!
是非、チェックしてみてください~~!
少しでも、皆様が楽しめる作品をこれからも書き続けれたらと思います。




