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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 私はジュリー様が次に何かを発するのを待つことしかできない。

 この静寂の中で、息をするのも許されないぐらいの緊迫感がある。彼女が今、何を考えているのかさっぱり分からない。

「王宮を燃やすのが貴女の目的?」

 その質問に怒りは感じられなかった。ただ質問しただけ。……そろそろ私の方を向いてくれてもいいのに。

「……殺害計画のために」

 私は「誰を」とは言わなかった。このワードだけで私に興味を示してくれるはずだと思い、ひっかけてみた。

 また、沈黙が流れる。

 何度、この心臓が飛び出しそうな状況になるのだろう。私はじっとジュリー様を見つめていた。

「誰かの真似でもしているの?」

「心当たりがあるんですか?」

 この状況でよくジュリー様を煽れるなと我ながら思う。けど、ここで引いたら何も始まらない。

 私はこの状況になったことを絶対に無駄になどしたくないもの。全ての犠牲を払う覚悟でここに立っている。

「ウィリアムズ家の子息も三人関わっているんでしょ?」

 そこまで見抜かれていることに私は素直に驚いた。

 私がウィルおじさんと似たような状況を作り出そうとしていることなどお見通しかのような口調でジュリー様は話す。

 馬鹿にするような口調だけど、私を責めるような雰囲気は感じ取れない。

「私は権力と贅沢に目がくらんだ馬鹿な女じゃない」

 周囲がジュリー様に抱いている印象とジュリー様の本音は異なるものなのだと改めて実感した。

 そんなことは当たり前のはずなのに、勝手に自分の中で描いていたシーカー・ジュリー像があった。対面でしか分からない本音が常にそこにはあるのに、私は自分の想像だけでジュリー様を見ていた。

 権力と贅沢に溺れている、と誰かに言われたことがあるのだろう。

「ルークだけ守れればそれでいい。私はルークのためなら命も捨てられるわ」

「だから、ウィルおじさんの目を奪い、ロアナ村へと追放したんですか?」

 彼女の肩がピクッと微かに震えるのが分かった。小さな動揺だけど、それだけで私は賭けに出た。

 攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。

「ええ、そうよ」

 嘘だ。

 私は何故か直感でそう思った。もしかしたら、嘘だと思いたいだけかもしれないけれど、彼女から出たその言葉はとても冷たかったが、本音ではないような気がした。

「私は彼の母親なんかじゃないし、なれない。それに、魔力を失った少年など王族には必要ない。国王が許しても私は許さない。それに、私、貴女も嫌いよ。憎くて、今すぐ私の前から消したいわ」

 ゆっくりと、淡々と、はっきりした声で年老いた高貴な女性が言葉を紡ぐ。 

 私にとって、気分を害することを言われているはずなのに、苛立ちはない。

「どうして、私まで?」

 最も単純な質問をする。

 初対面なのに、どうして私をそこまで毛嫌いするのかが分からない。

「私の最も憎い人が大切にしていた女の子を好ける理由などない」

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