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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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『アリ!! 無事か?』

 王宮の中で初めて通る道を歩きながら、脳内でヘンリお兄様の声が響く。

『大丈夫です。後はお任せを』

 無事に捕まってしまったので、後は自分の実力に任せるしかない!

 こんなにも大丈夫じゃない状況ってある? って思われるかもしれないが、私はこの状況になることを望んでいたのだから、万々歳よ。

『お兄様方は無事に逃げられましたか?』

『ああ。今は3人とも合流している。アリシアも早く』

『私の勝負はこれからです』

『……は?』

 ヘンリお兄様の心の底の「は?」をいただきました。

 私の計画は王宮爆破計画であって、ジュリー様との対談が目的としてあることは伝えていない。

 現在私が王宮の衛兵を隣に、入ったことのない王宮の塔へと足を踏み入れているなんて想像できないだろう。

 勇敢な妹、というより、愚かな妹ね。 

『先にお帰りください』

 お兄様方にそう伝えて、私は真っ赤なカーペットが敷かれた階段を上る。

 ここからあの廊下に出てきたってことは、やっぱりデューク様を心配しに飛び出て来たのかしら。

 孫想いのおばあ様なのかな、と私は呑気なことを考える。

『どこにいるんだ?』

 アルバートお兄様の質問に『まだ王宮です』と答える。

 一緒に計画を実行している以上、嘘は吐けない。デューク様に助けてもらう、と言いたいところだけど、そんな嘘はすぐにバレてしまう。

 傲慢な令嬢として今まで過ごしてきた。悪女になるために必死に自分を磨いてきた。

 …………死ぬ覚悟なんて出来ていないけれど、私はウィルおじさんとは違って、殺されるかもしれない。

 これはウィルおじさんのためではなく、自分のための行動。

 この国のラスボスと対面できるなんてワクワクしちゃうわ! 

 私のライバルはリズさんだけど、デュルキス国に戻ってきたら色々と環境が変わりすぎていたんだもの。私の悪女っぷりは今ここで発揮すべきよ。

 さっきまでの恐怖を覆い隠すように私は自分にそう言い聞かせて、気持ちを鼓舞させた。 

『我儘な妹でごめんなさい』

 私はお兄様方にそう伝えて、脳内通信を切った。 

 階段を上り終えて、扉の前に立った。なんだか陰鬱な場所だけど、華やかさはある。

 ジュリー様と出会うことで、優雅さの中にある惨さ、を最も実感できるかもしれない。自分の知らない世界を見ることにやっぱり心が惹かれる。

 ……ここが、ジュリー様の部屋かまだ分からないのだけど。

 どうしよう、この扉を開けた先に全然知らない使用人が大きな顔をして座っていたら……。

 作戦大失敗だけど、それもそれで面白いわね。

「連れて参りました」

 衛兵が部屋をノックして、暫くして、「入りなさい」と扉の奥から声が聞こえた。

 良かった、ジュリー様の声だわ。私ってば、運だけはあるのよね。今のところ、作戦大成功じゃない!

 私は少しだけホッとして、姿勢を正した。

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