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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 私は抵抗することなく、両サイドから衛兵に腕を掴まれる。

 遠くに立っているジュリー様は鋭い目で私を見つめて、背を向けてどこかへ歩いて行った。  

 ……この作戦を立てて、無事にジュリー様と会えたのは良い。けど、この後、無事に彼女から制裁を受けることはできるわよね?

 一抹の不安を抱えながら、私は足を進めた。

「アリシア?」

 私の名を呼ぶ中で最も好きな声。チラッとその声の主の元へと視線を向ける。

 デューク様が目を見開いて私を見ていた。起きたてでも相変わらず美しさは変わらない。

 周囲が騒がしい中、時が止まったように思えた。私とデューク様だけの空間があるみたい。

 デューク様との大きな別れはこれで2度目だ。……ラヴァール国に行く時ですら私は彼に愛を伝えなかった。

 きっと、もう最初から一目惚れしていたというのに。

 私は振り返りながら、小さく微笑んだ。

「デューク様、愛しています、もうずっと前から」

 初めて思いを言葉にして伝えた。

 ずっと伝えなければならないと思っていた。愛は目に見えないから、ちゃんと喉を震わせて、実体のない感情を正す。

 私は「愛しています」と言葉にした時に、初めてこの感情が本物になった気がした。

 デューク様が固まっているうちに私は衛兵に連れられ、その場を離れた。

 ……彼の目に私はどんなふうに映ったのだろう。最後に見た私の姿は、どうか凛々しいものであってほしい。

 傍から見たら、私たちは大恋愛でそこにはとてつもなく物語性を帯びているのだろうけど、実際は私の自由勝手な馬鹿げた行動でしかない。

 愛する人よりも私は私利私欲を優先しているのだから……。そう思えば、デューク様はずっと私中心に動いてくれていた。

 私は今から地獄へ行くというのに、思わず頬を緩めてしまった。

 今までデューク様が私に与えてくれていた愛情を全て無駄にしてしまったのかもしれない。この計画を立てる前に、デューク様に甘えれば良かったのかもしれない。

 ……けど、私の生き方は、ただひたすら己の信念だけを信じて前に進んで行くから。

 ウィリアムズ・アリシアはこれでいい。王宮爆破予告を立てた悪女として輝くのだから……。

 切なさなどそこに感じなくていい。

 今回で王宮の衛兵に捕まるのは2回目だ。デュルキス国において、私ってば重罪人になるじゃない。

 本来なら興奮して喜べるはずなのに、今はジュリー様と向き合うことの怖さに緊張感を覚えている。

 私はこれから、おじい様方を国外追放にして、ウィルおじさんの目を奪い、ロアナ村へと追放したラスボスに出会うのだ。

 今まで修羅場は何度だってくぐり抜けて来たけど、今回はだいぶ訳が違う。

 ……本来ならこの国の最高権力者の国王様と謁見する方が緊張するはずなのに、ジュリー様の方が心臓が落ち着かない。

 スゥッと大きく息を吸い込んで心をなんとか冷静に保ちながら足を進めた。

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― 新着の感想 ―
王宮爆破予告って予告でもないし爆破でもなくないですか? 炎上事件になってますよ
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