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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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『……この魔法石、本当に効果を発揮するのか?』

 アランお兄様の声が聞こえた。その質問にすぐに答えるアルバートお兄様の声も脳内に響く。

『アリシアを信じるしかないだろ。……ヘンリもそう思うだろ?』

『ああ。信じるしかないが、この量を遠隔で操作は……』

 いつもなら、ヘンリお兄様は確固たる自信で「アリシアなら大丈夫だろう」と言ってくれるのに……。 

 まぁ、それぐらい難易度は高いということ。

 私は三人の会話を聞きながら、魔法石を発動させた。その瞬間、今の私が立っている廊下が一瞬で真っ赤な炎に包まれる。

 温かいが、火傷は一切しない。

 幻を生み出すことができて、私はホッとする。大きな炎が王宮全体を包み込んでいる。

 ……………………これは流石に歴史に残り過ぎちゃう悪女ね。

 未曽有の事件になりかねない。それも、ウィリアムズ家の令嬢だなんて本当に不可解な事件になりそうだわ。

 さぁ、ジュリー様、あなたは一体私の前にどのようにして現れるのかしら。楽しみで仕方がないわ!

『ほ、本当に、燃えている』

『なんて凄まじい魔力なんだ』

 アランお兄様の後にアルバートお兄様の感嘆の声が聞こえてきた。

 これを後は、一瞬で消すだけ……。使用人や衛兵たちが目覚めて、慌てて騒いでいる様子を感じ取れる。

 ……規模の大きな馬鹿げた計画だけど、傍から見ている分にはかなり面白いかもしれない。

 死人は誰一人いない爆破なんて幸運な事件だこと……。

 もうそろそろ、幻を全て消し去らなければならない。それも水魔法で消していると思わせなければならない。

 私ってば、なんとも難しい計画を立てたものね。……こんなの、私以外出来る人いないんじゃないかしら。

 そう思いながら、少し口角を上げて、炎を消すことに全集中を注いだ。

 きっと、お兄様たちは半信半疑で私についてきている。それでも私を信じる気持ちの方が大きかったのだろう。

 安心して、ちゃんとその期待に応えるわ。

 見せかけの水魔法……。デューク様ほどの魔力は私にはないけれど、私が作った炎よ。一瞬で消すことができるわよ。

 炎が盛大に王宮の中で踊っているのに、建物は何一つ傷はついていない。ただ、しっかりと熱さは感じているはずだから、王宮にいる者たちみんなが混乱している。

 私が持っている魔力で王宮を覆う。

 その瞬間だった。私の耳に威厳のある女性の声が「何事」と響いた。

 私は長い廊下の先で佇む一人の女性と目が合った。急いで起きて来ても、なおこの動揺の中で一番落ち着いていた。

 …………シーカー・ジュリー。

 私は彼女の名を心の中で呼んだ。少しして、王宮の炎が全て消え去った。

 魔力をほとんど使い切るほどの大仕事だ。

『本当に消えた。……この炎を一瞬で消すなんて』

『五大魔法は最高レベルが不明だ……。アリシアはきっと、レベル100を優に超えている』

 アルバートお兄様とヘンリお兄様の声が聞こえる。

 魔法オタクだと自分でも思うぐらいに、昔は魔法に打ち込んでいたのだもの。これぐらい出来て当たり前だわ。

「あの女を捕らえなさない」

 炎が完全に鎮まりかえった廊下にジュリー様が衛兵に言葉を言い放った。

 怒鳴るような口調でなく、いたって冷静で、そして、その声に私は恐怖を覚えた。

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