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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 アランお兄様の言葉に私は口を閉ざしていると、長く、大きなため息が聞こえてきた。

 私はアランお兄様の方を見つめながら、彼が話し始めるのを待った。

「アリシア、これだけは約束してくれ」

 あまりにも真剣な瞳に私は姿勢を少しただす。数秒間の沈黙が緊張感を生む。

「……絶対に死ぬなよ」

 アランお兄様のその言葉に全てが詰まっているような気がした。そして、それは、私の計画に乗るということを示唆した言葉だった。

 私は満面の笑みで「ええ」と答えた。

 兄弟というものは良いわね。

 私はアルバートお兄様の方へと視線を向けた。まだ、アルバートお兄様は私の頼みごとに承諾はしていない。

  別に断られてもないけれど、彼はこの計画をどう思っているのだろう。

「私の人生だもの。とやかく言われる筋合いはない」

 ずっと私が思ってきたことをアルバートお兄様の口から発せられた。

 これは、私の気持ちを代弁してくれているのよね?

 どういう意図でお兄様がこんなことを言っているのか分からない。

 私は他人の意見に左右されずに自由に生きたい。他者が私をどう評価するかなんてしっかりと認知しているのを自覚している。その上で、私は私の人生を作り上げていく。

 ぼんやりとしていても人生は流れていくのだから、私は信念を持って人生を作ってみせる。

 その信念が正しいか間違いかなど重要ではない。私が所有する信念は私の人生の背中を押してくれるもの。

 だから、私は「立派な悪女になる」なんて傍から見たら、なんて馬鹿らしいと鼻で笑われるような信念でも、必死に貫いてきた。

 今回も私の信念がこの計画を後押ししてくれている。

 長い静寂が続いた中、アルバートお兄様がゆっくりと口を開いた。

「アリシアの好きに生きていい。……だが、アリシアのことを心配している人間がいるということもどうか忘れないでくれ」

 いい迷惑、と済ませられない。兄たちの思いをそんな風に一蹴できないなんて、悪女から離れていっているかもしれないわね。

 けど、悪女も一人で生きているわけじゃない。誰もが、この社会で一人で生きているわけじゃない。

 そう考えたのと同時に、私はふと「孤独」というワードが頭に過った。

「ああ、ようやく理解できた気がするわ」

「……なにを?」

 ヘンリお兄様は私を不思議そうに見ている。

「よく、人は一人で生きていけないけれど、独りではある。みたいな言葉が使われるじゃない?」

「ああ、まぁ、たしかに……?」

 ヘンリお兄様のその相槌には「そこまでその言葉は聞かない」という含意があるように思えた。

「私たちの精神は誰にも奪えはしないの。この肉体に宿っている魂は私だけのものだから。だから、人は皆孤独なのよ」

「アリシア、急に哲学者になったのか?」

 ヘンリお兄様、残念ながら、私はいつだって悪女なのです。

「何が言いたいのかと言うと……人との繋がりを求めて、自分を肯定してもらうことで、孤独を一時的に逃がすの」

 ジュリー様のことを考えると、彼女は孤独をずっと抱きしめていたに違いない。そして、孤独が唯一薄れた瞬間が、今の国王様といる時間だったのかもしれない。

 少しだけジュリー様に近付けたような気がした。

「…………そこまでの思考力があるのに、アリシアのことを馬鹿だと思っていた少し前の自分が情けなくて仕方ないよ」

 アランお兄様はそう言って、苦笑した。

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