表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
499/686

499

「アリシア、どこに行くの?」

 馬車の中でジルが訝し気に私を見る。

 私は朝食の間にゴードン・オージェスの存在を思い出し、思わず家を飛び出してきてしまった。

 ロゼッタが持ってきたマフィンを頬張りながら、私はこの間、彼から貰った名刺をジルに渡した。

「オージェス商会……?」

「そうよ。今からゴードン氏に会うのよ」

「アポなしで?」

「私が門前払いされるわけないでしょ。ウィリアムズ・アリシアよ?」

 こういう時は己の家の権力を存分に使う。

 利用できるものは利用していかないとね。家の名前を使わずに、なんて綺麗事言っていられない。最も迅速に情報を得ないといけないのよ。

「確かに、ウィリアムズ家を追い払うなんてこと絶対できるはずないもんね。……前国王の妾って絶対に悪者だよね」

「…………そうとも限らないかもしれないわ」

「え」

 私の言葉にジルは驚いた表情を浮かべたが、それ以上追及してこなかった。

 色々な憶測しながら、私たちはオージェス商会へと足を運んだ。




「全くアリシアは嵐みたいな子ね」

 レイラは紅茶をゆっくりと口に流しこみ、ティーカップを机の上にゆっくりと置いた。

 その貫禄にロゼッタや周りの侍女や執事たちは思わず見惚れていた。

「まぁ、それがアリシアの良いところさ」

 ヘンリはそう言って軽く笑う。

「落ち着きのある淑女になるのは無理そうね」

「けど、気品のある良い女だ」

「あら、ヘンリは随分とアリシアを買っているのね」

 ニコッとレイラがヘンリに微笑むと、ヘンリも同じように彼女に笑い返す。

「母上もアリシアのことは買っているでしょう」

「あの子は……、特別だもの」

 そのどこか意味を含んだレイラの言葉にアーノルドが「そうだな」と頷いた。

「……もしかして、オージェス商会の評判の話もアリシアが関係してたりしますか?」

 突然、アルバートが口を挟む。

「そうね。……オージェス商会の評判が落ちた理由がゴードンのご子息様の失態でしたっけ? ……それには一人の貴族の娘が関わっているとか」

 レイラはどこか楽しそうに話す。

 ヘンリはハッとアリシアのことを浮かべた。もちろん、残りの兄弟やアーノルドも脳内にアリシアを浮かべただろう。 

「ダメ息子を説教したらしいわよ」

 レイラは笑いながら話を続けた。

「ゴードンは息子を勘当したようね。相当手を焼いていたようだから、丁度良かったんじゃない。あの息子も学んだんじゃないかしら。世の中はそう甘くないって」

「……母上って結構怖いよな。どっから情報仕入れてるんだよ」

 ボソッとアランがヘンリに呟く。

「オージェス商会というか、街の噂なんて大して知らなかったぞ、俺」

 ヘンリの言葉にアランは「俺も」と同意する。レイラはそんな彼らの様子を見て、フッと口角を上げた。

「男と女では役割が違うのよ」

 彼女の言葉にアーノルドはただ黙って頷いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ