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疲れた〜〜〜!!
私は一気にベッドに飛び込む。外はもう真っ暗だ。涼しい風が窓の隙間から入ってきて、私の頬を撫でる。
心地良い風に癒されながら、私は仰向けになって手に持っていたウィルおじさんの本を天井に掲げた。
……この本を作ったおじい様に脱帽だわ。
絶対に誰にも開けれないように作られてた。きっと、リズさんでも難しかったに違いない。
あの鍵がなければ絶対に開かない強力な魔法だった。
「さすが悪女のおじい様ね」
私は彼の孫で良かったと思った。尊敬できる祖父と出会えて良かった。
「……疲れたけど、やっぱり最後まで読もうかしら」
本をじっと見つめながら、少しの間考えて、本を開くことにした。
ついにジュリー様について手がかりを手に入れたのよ。最後まで読み切らないと!
ページを捲るが、ジュリー様のことに関して特に書かれていない。
これからのデュルキス国のあり方やロアナ村の住人にどう対応していくべきか、など書かれていた。
……終活ってところかしら?
『ネイトとレベッカがいれば不安はない』
あら、二人とも随分とウィルおじさんに買われているじゃない。
けど、奇遇ね、ウィルおじさん。私もそう思うわ。
日記を読みながら、ウィルおじさんと話しているような感覚になる。
『それにあの二人はアリシアを信頼して、何より尊敬してる。きっと、この国はいい国になるだろう。……生きているうちにそれを見ることができないのが残念だが』
必ず、ウィルおじさんが理想とした国にします。
理想を語るのは好きじゃないけれど、私は貴方の思いを受け継ぐわ。
『義母についてずっと考えていた』
私はそこでまた心臓が止まりそうになる。
……ジュリー様の登場にはいつも構えてしまう。
『彼女は私を誰よりも嫌っていた。……しかし、あの時の表情。どこか腑に落ちない』
『これだけが気がかりだ。ジルやアリシア、デュークたちに害がなければいいが……』
『義母のことだ。何をするか分からない。彼女は自分は自分でこの国を動かしたいという野心が昔からあった。最終決定権はルークのように見えていたが、いつも義母だった。傀儡政権という表現が合っているのかもしれないな』
ウィルおじさんにこんなことを書かせるなんて、ジュリー様、相当大物ね。
倒し甲斐があるじゃない!! ……別に喧嘩しにいくわけじゃないけれど。
『そうだ。思い出した』
「何を!?」
私は日記につっこんでしまう。
急いで次のページを捲る。私はその文章を読んで固まった。
『彼女があの時――ロアナ村に追放する時に、私に最後に言い放った言葉を思い出した』
「生き残りなさい」
薄い筆跡だったが、そこにたしかに書かれていた文章を読み上げた。