表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
493/686

493

「ねぇ、ジル」

 自分の声が震えるのが分かった。

「何?」

「ウィルおじさんは心の底から貴方を愛していたのね」

 誰もが分かりきっていることだが、もう一度ジルにそう伝えたかった。

 ジルは深い愛でずっとウィルおじさんに愛されていたこと……。幼い頃に家族を失っても、ジルには誰よりもジルを大切に想ってくれていた存在が、ジルが思うより遥か前からいたということ。

「なんて書いてあったの?」

「ウィルおじさんはジルと初めて会った時から、ジルをロアナ村から出そうと願っていたのよ。貴方の可能性を誰よりも信じていた」

 きっと、ジルがこの本を読むにはまだ早い気がする。

 今の彼が読んだら、また精神が崩壊するかもしれない。だから、私がウィルおじさんの想いを伝える。

「出会った時から? ずっと? けど、そんなこと一言も……」 

 ジルの瞳が潤むのが分かった。

「私がロアナ村に来た時に、ジルを私に売り込んだのはウィルおじさんなのよ。賢い少年がいる、と」

 ジルは何も言わずに俯いた。

 彼の頬に涙が伝うのが見えた。「アリシア」とジルは顔を伏せたまま私の名前を呼んだ。

「僕、じっちゃんの期待に、応えられた?」

「ええ、とても」

「……そっか」

 デューク様がそっとジルの頭を撫でた。 

 ジルは私が想像していた以上の少年だった。ウィルおじさんはとんでもない素晴らしい贈り物をくれたわ。

 私は本を読むのを再開した。

『アリシアというウィリアムズ家の令嬢がこの村に来た。デュークから言われてた令嬢とはこの子のことだろう。彼女を使えばジルを外に出すことができると思う。アルベールの魔力を彼女から少し感じた。懐かしい感覚だ。闇魔法を扱う者にもう一度出会える日が来るとは……』

『彼女はわしが想像していた令嬢とは随分と違う。きっと、大物になるに違いない。ジルをこの村から出すために利用しようと思っていたが、アリシアはこの村を変えてくれるかもしれない』

『アリシアは面白い。不思議な少女だ。彼女がいると昔の自分を思い出す。天才少女だ。どうかわしの二の舞にならないように慎重に魔法習得させよう』

『アリシアとジルの相性は良い』

『この本は日記なのか、何なのか……。どうせ誰も見ることのないものだ』

『ジルがこの村から去った。この日をわしはずっと待っていた。わしの役目は終わりだ。嬉しいが、少し寂しい気もする。我が子が巣立っていく時の気持ちが少し分かった気がする』

『ロアナ村は変わった。アリシアのおかげだ』

 ペラペラとページを捲っていると、とても大きな文字が目に留まった。

『見える。私の世界が戻った』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ただいま世界(*´ω`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ