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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「……何が書いてあるんだろう」

「叔父上の日記とかじゃないのか……」

「じっちゃんの日記なら僕も読みたいのに! けど、アリシアがあそこまで険しい表情で読んでいるってことは、明るい内容じゃなさそうだね」

「叔父上の人生は俺達が想像もできないほど壮絶だからな」

「…………じっちゃんが亡くなってもなお、じっちゃんは僕たちに大きな影響を与えてるね」

「ああ。とても素晴らしい方だった」

 ジルとデューク様が何か会話していたが、彼らの会話の内容など耳に入ることなく本を読み続けていた。

 この日記は、ウィルおじさんが魔法を使えなくなった日から書かれている。

 当時の彼の痛みが本を通して伝わってくる。

 ……あの時、最後にウィルおじさんの記憶の中に入ってウィルおじさんの苦しい過去に触れた。けれど、あれは本の一部だったのね。

 魔法を使えなくなった彼は、自分に対しての価値を見出すために必死に努力している。

 誰も責めることなく、自己嫌悪に陥っても這い上がった。その軌跡が記されていた。おじい様は彼のその様子を誰よりも近くで見ていたのだろう。

 私はジュリー様について書かれているところを探した。

『魔法の使えない私に価値はない。もうこの世から消えてしまいたい』

 読みにくく汚い字。ウィルおじさんの字とは思えない。 

 この辺りが随分と荒れていて、読みにくかった。

『皆、私を腫れ物のように扱う。父に失望されてしまった。何も持っていない私を認めてもらうことなど、もう不可能だろう』

 未来に絶望しているのか、字は整っているが覇気を感じられない。

 当時のウィルおじさんの様子が日記越しに分かる。

 ……あ!! あったわ! ジュリー様について!

『義母は私を邪魔者だと思っている。何か企んでいるようだ。警戒しておかなければならい』

 これだけ……。どういう人物像なのか一切分からない。

 そもそも、未だに私たちの前に姿を現したことがないなんて、どう考えても怪しい。もはや、存在するのか疑ってしまうわ。

『魔法が使えなくとも、自分にできることを探そう。少しでもルークの役に立てるように』

『魔法の使えない私がこの国を支えることができれば、この国の制度は変わるかもしれない。貴族だけでなく、平民にも平等にチャンスが与えられる。魔法主義から実力主義へと変えていく先駆者となろう』

 これは……、まだウィルおじさんが目をくり抜かれる前。

 先見の明を持っていたウィルおじさん。この国はとんでもない大物を手放したのね……。

「ねぇ、デューク」

「なんだ?」

「僕はね、じっちゃんの日記を読む勇気がないかも」

「……読みたい時に読めばいい。無理に今読む必要はない。必要な情報はアリシアが読んで教えてくれる」

「だって、……アリシアがあんなにも涙を溢しながら読んでいるんだよ。もし、あの本を読んだら僕はきっとまた前に進めなくなるかもしれない」

「ああ。きっとアリシア本人は自分が泣いていることに気づいていないけどな」

「だね」

 私はウィルおじさんの過去に寄り添いながら、ジュリー様の情報は何かないかと必死に本を読み続けた。

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