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デューク様は馬車で私の家まで送ってくれた。
その時、私は屋敷の中で見つけた本の話をした。
どれだけ頑張っても決して開くことのなかった不気味な本。
私の話をデューク様は真剣に聞いてくれた。私の魔力で開かないということは、私より強い者があの本に魔法をかけたということだ。
自信過剰ではないが、私の魔力はかなり上位だ。お兄様たちよりもレベルは上だし……。
「鍵がかかっていたのか?」
「はい」
デューク様は眉を顰めながら、何か考えていた。
さっきまで甘々な雰囲気だったのに、私たちの場合すぐにこのモードになる。
まぁ、それが私たちらしいと言えば私たちらしくていいのかもしれない。世の事象に対して、考えて、解決していく。それが楽しいのよね。
私たちの間でそれが共通して存在する。
「何か思い当たる節が?」
私はデューク様を見ながらそう聞いた。
「ああ。確信できないが……、明日、ウィリアムズ家に行く」
「デューク様の予想は的中するので、楽しみに待っていますわ」
私はそう言って微笑んだ。
いつも何か解決してくれるのはデューク様だ。期待するな、と言われても期待してしまう自分がいる。
「その本は突然現れたんだな?」
「はい。自分の家の本は把握しております。ましてや、あんな魔力が強力な本に気付かないはずないわ」
「……叔父上の死によって現れた可能性は?」
「それは……」
私は言葉に詰まった。
ありえない話ではない。ウィルおじさんなら、そんなことをしそうな気もするし……。
そんなことを考えてるうちに馬車が止まった。
「もう一度、あの本を調べてみます」
私はそう言って、馬車を降りた。
「俺も俺で調べてみる」
「では、また明日」
「ああ」
私は馬車を降りて、デューク様に向かってお辞儀をした。
顔を上げた瞬間、デューク様は私の前髪を優しく手で払い、額に口付けをした。
……不意打ち!!
なんてせこいの! この王子様は!
まだ甘々モードが続いていたなんて、聞いていない。
「じゃあな、アリシア」
私は惚けたままデューク様の馬車を見送った。




