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久しぶりに自分の家の図書室にきた気がする。
夜中に目が覚めてしまったから、二度寝することなくそのままここへ来た。
私の管轄外と言ったら管轄外だけど、ジュリー様については前から少し気になっていた。
彼女に会ったこともなければ、王宮で彼女の気配を感じたこともない。……もしかしたら、向こうに私の存在は認知されているかもしれない。
というより、絶対に認知されているわよね。
図書室を一通り見回ったが、彼女の情報が載っていそうな書物は何一つなかった。
「……ジュリー様の情報なんてあるわけないわよね」
私はガクッと肩を落とす。
ウィルおじさんの死は絶対に知っているはず……。それなのに顔を現さないなんて……。
全く人物像が掴めない。ただ、分かっていることは過保護な母親だってこと。
「そうだわ!」と思わず大きな声を出してしまう。
国王様に母君がどんな方なのかを聞き出せばいいのよ!
答えてくれるか分からないけれど、それは私の力量が試されている。……デューク様に頼んでもいいのだけれど、また余計なことに首を突っ込むのかって思われるのもなんだか嫌だし。
カーティス様とメルの恋愛事情は一体どこへいったんだ? ってなるに違いない。
……けど、こそこそ動いても絶対にバレるわよね。いっつもデューク様の方が一枚上手なのだもの。
何か作戦を練らないと……。
そんなことを考えていると、ふとある本が目に留まった。
あら、あんな本あったかしら……?
この家の本は幼い頃に大体読み漁ってしまったと思っていたのに……。
私は本の方へとゆっくり足を進めた。すっごい歪な形の本なんだけど、手にとって大丈夫なのかしら。
悪魔から仕入れた本みたいな雰囲気が漂っている。
いや、だめでしょ、あんな本が家にあっちゃ……。ウィリアムズ家呪われない?
私は恐る恐る本に顔を近づけた。私はじっと近くで本を見つめる。
…………本から魔力を感じるなんてどういう状況なのよ。
本から放たれる微かな魔力に思わず眉間に皺を寄せた。
飽きない日々なのは嬉しいけれど、そこまで刺激を求めていないわよ。もう少し、ゆっくりと穏やかな日常が続いてもいいじゃない。
私はそんなことを思いながら、本を手にとった。
「わ!!」
想像以上の重さと強い魔力に声が出る。
なんなの、この本!
題名を見ようと思っても読めないし、表紙は黒色で覆われていてなんの情報も書かれていない。
ただ、随分と古い書物だろうということだけは分かった。
「この本、鍵がかかってる」
魔法で無理やりこじ開けようとしても、開けることができない。
……魔法が無理なら、力づく?
私は手に力を込めて、グッと開けようとした。鍵穴なんて関係ない。パワーよ!
しばらく奮闘したが、全く開く様子がない。
びくともしない本に私は大きくため息をついた。
「なかなかやるじゃない」
私は息を切らしながら、なんとか開けて中身を読んでやろうと必死に魔法や筋力を使ってこじ開けようとした。