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いつから、私はカーティス様のお気に入りになったのかしら?
私が未だに信じられないという表情を浮かべていると、メルが口を開いた。
「アリアリはそういう子だもんね。キャザーリズとは違う人たらしって感じ」
「人たらしなんて初めて言われたわ」
この学園で私ほど嫌われている人物はいないだろう。
「メルはカーティス様とお付き合いしたいの?」
素朴な疑問をメルに投げかけた。
すると、彼女は珍しく顔を真っ赤にして「そんなことない!」と声を上げた。
なんだか、メルがちゃんと女の子で良かった。恋愛に全く興味ないと思っていたもの。
「なんか可愛らしいわね」
「も~~! 違うから!」
私の言葉にメルはあたふたしている。
やっぱり、皆感情をコントロールできなくなってしまうのって恋愛なのかしら。
メルは少し落ち着いた様子で話を始めた。
「アリアリのことを気に入ってるカーティスのことが好きなわけだし、カーティスの好意を自分に向けられるのは違うからね」
メルからはいつも子供っぽさを感じているけれど、こうやって淡々と話す様子はとても大人に思えた。
好きな人を諦める、ってとても難しいことだと思う。
その人と一緒にいる時間がある限り、見る限り、こえを聞く限り、話すことが出来る限り、そう簡単に諦められない。
手に届く距離に好きな人がいるって厄介だ。
「……けどさ、別にそんな早く大人になろうとしなくていいんじゃない?」
ジルがメルに向かってそう言った。
大人になればなるほど、見えなかったものが見えるようになるけれど、逆も然りだ。
変な固定観念やルールに縛られて、見えなくなってしまうこともある。
「メルの一番の望みは何?」
私がそう聞くと、メルは少しだけ考えた後に口を開いた。
「私が好きだったっていう事実を知っていてもらいたい。……私の気持ちをなかったことにしたくない」
「私たちは全力でメルの背中を押すわ」
私がそう言うと、ジルは私へと視線を移した。
「悪女になるの?」
確かに、さっきまで悪女ポイントを稼ぐ会議だったけれど……。
けど、ここで変に悪女になるのは違う。メルとカーティス様のために悪女として動くと、空回りしてしまいそうな気もする。
「たまには友の為に動く女になっても良いでしょ?」
ジルの方へと笑みを向けると、彼も嬉しそうに「うん!」と首を振った。
デュルキス国にいる間は、メルの恋を素直に応援しよう。
今までずっと助けてもらってきたのだもの。恩を忘れるような人間になりたくない。悪女として廃れるわ。




