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「それは良い案かもしれませんわ」
キャロルはジルの話に乗り気なようだ。メルは鋭い視線でキャロルを睨む。
「キャロル、覚えておきなさいよ」
「ええ、勿論メルの恋愛はちゃんと覚えておくわ」
「……ほっんと良い性格してるわよね」
「メルもね」
キャロルは睨みつけてくるメルに満面の笑みを返している。
この二人ってやっぱり似ている。犬猿の仲のように見えて、意外と波長が合っているのかもしれない。
ジルはデューク様の方を向き「デュークは?」と聞いた。
「面白そうだし、いいんじゃないか?」
「主、従者の恋を面白がらないでください」
「俺の恋愛に散々口出ししてきたことを忘れたのか?」
「……それとこれとでは話が違います」
恋のキューピットになるか否かは、どこまで深い恋愛をしているかにもよる。
関わり過ぎると、何もかもダメな方向へと進みかねない。それだけは避けたい。私は人の恋の話を娯楽として聞きたいけれど、それを破壊しようなんて思わない。
「ちょっと~~! アリアリからもなんか言ってよ!」
「……とりあえず、メルの恋愛話を聞かしてもらえる?」
「も~~! なんでそうなるの!」
メルは嘆くように私を見つめた。
彼女も私たちと一緒によくいるから知っているはずだ、私たちがこれと決めたら絶対に覆さないことを。
半分諦めたような表情をしてストンとまた腰を下ろした。
「私の恋愛話なんてちっとも面白くないよ」
私たちは目を輝かせながらメルの話に食いついた。メルだけが不服そうに頬を膨らましている。
メルは長い溜息を吐いた後に、口を開いた。
「カーティスが好きなの」
…………カーティス?
思いがけない登場人物に全員が固まった。
まさかここでカーティス様が出てくるなんて……。というか、メルがカーティス様に恋に落ちるなんて驚きでしかない。
てっきり、メルはデューク様に秘密の恋心を抱いているって馬鹿げた想像をしていた。
「ただ、私はカーティスのお気に入りを知ってるから何かしようなんて思ってない。以上! 私の恋愛話はこれで終わり」
メルはそう言って、無理やり話を切り上げた。
「え、カーティス様にお気に入りなんているの?」
カーティス様は女の子は誰でも好きなタイプの男性だ。「特別」は作らないはず。
私の素朴な疑問に、皆目を丸くして私の方を向いた。私がきょとんとしていると、全員が同時に大きなため息をつく。
「これだからアリシアって」
「恐ろしい女の子だよね」
ジルは片手で頭を軽く抱えている。メルも呆れた様子で私を見つめていた。
「…………もしかして、カーティス様のお気に入りは私とでも言いたいの?」
私が顔を顰めながらそう言うと、四人とも一斉に首を大きく縦に動かした。
……衝撃の連続が多すぎて話についていけなさそう。




