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「アリシア様が決めたことなら、何であれ応援致しますわ」
「そうだよね。私達はアリアリ応援隊だもん」
なんて物分かりの良い二人なのかしら。
物分かりが良いというより、私は彼女達にとても愛されている。いつも私のことを支えてくれている。
「ありがとう」
私は心の底からそう言った。
「僕もアリシアのことを一番に応援してるからね」
「俺が一番応援してる」
ジルに続いてデューク様も私の方へと視線を向ける。
「その対抗心いりますか?」
私はデューク様の言葉に少し恥ずかしくなりながらも、ちょっと強気な口調で返答した。
どうして私が悪女になることをこんなにも応援してくれているのかはちょっと不思議だ、嬉しい。胸が熱くなる。
というか、一国の王子様が令嬢を悪女にすることを後押ししても良いのかしら。
冷静に考えたら、変な状況よね……?
「もしかして、デューク様も悪い男になろうとしてます?」
私は思わず訝し気にデューク様を見つめてしまった。
悪女になりたい私を利用して、デューク様は私よりもっと凄い悪の王子になろうとしているのかもしれない。
私の言葉に皆固まった。一呼吸置いて、デューク様の笑い声が部屋に響いた。
……私、何かおかしなこと言ったかしら?
デューク様の豪快な笑い声に私以外の皆も驚いている。
私の単純な疑問でこんなにも笑ってくれるなんてむしろ光栄だわ。
「そうかもな」
デューク様は笑いながらそう言った。
……そうかもな?
「え、デューク様って私のこと好きなんですよね? もしかして、それも騙されてます?」
「この上なく惚れていることには違いない」
「……な、るほど?」
「ちょっと主~、あんまりアリアリをからかわないでください。アリアリはこれからのことで頭がいっぱいなんですから」
メルが少し呆れた様子でデューク様の方を見る。
確かに今はデュルキス国滞在中に私の悪女ポイントを稼ぐことに集中しなければならない。
「アリシアって恋愛に関してはどうしてこうも不器用なんだろう」
「不器用っていうか、恋愛偏差値ゼロ?」
ジルの言葉にキャロルが付け足す。
ちょっと待って。私、キャロルにまでディスられてる?
「適材適所だから仕方がないんだよ!」
メル、それ全然慰めになっていないわよ。
ここには誰も私の味方はいないのかしら。……デューク様相手に恋愛するなんて結構至難の業よ。
「そういう皆だって恋愛経験あるの!?」
そう声を上げると、一瞬で静まり返った。全員目を丸くしながら私の方を見ている。
恋愛に関して、いつも私にばっかり焦点を当てられているけれど、そういう皆は一体どんな恋愛をしているのよ。
フィン様の恋愛も気になるけれど、メルとかキャロルがどんな恋愛をしているのかも気になる。