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「緊急悪女会議を開きます!」
私は旧図書室で大きな声を出す。
「はーい!」
メルはニコニコしながら高い声で返事をする。デューク様とメル、キャロルが集まっている。
客間から去った後、私とジルは一度部屋に戻り、着替えてから学園へと向かった。
面倒なことは避けたかったから、こっそりと学園へと忍び込んだ。生徒たちに私の存在がバレるといちいち相手をしなければならないことになる。
そんな時間は今の私にはない。「何故戻って来た!」「罪人が!」とか罵倒されるのも悪くないのだけど、今の私はもっと悪女として上を目指しているのよ。
学園の生徒たちを相手している暇はもうないわ。
どうやら旧図書室は私がいない間に、生徒会メンバーが使用する会議室みたいな使い方になってしまったらしい。
この場所、秘密基地みたいだと思っていたから、ちょっと悔しいけれど。
まぁ、しょうがないわよね。この場所は私有地じゃないし、独占できる権利もないもの。
「アリシア様……」
キャロルは私を見つめながらどこか泣きそうな顔をしている。
「ただいま、キャロル」
「ちゃんと生きたアリシア様だわ……。本物のアリシア様だわ」
「……そんなに感動すること?」
私がキャロルにそう言うと、ジルが「そりゃ、感動するよ」とすかさず言った。
私ってそんなに愛されキャラでもなかったのだけど……。
国外追放される女がこんなにも皆に想われていたって……、ちょっと照れくさいわね。
「そうよ! 感動よ! 生アリアリ久しぶりに見れて、本当に嬉しいよ~~! アリアリが帰ってきた日、ウィル様のお葬式だったから気持ち必死に抑えていたけど、今日はホールケーキ食べちゃおっと!」
メルが机に乗り出しながら声を出す。
久しぶりのメルのパワーに少し負けてしまいそうになる。この雰囲気、懐かしいわね。
デューク様は「メル、うるさい」とだけ短く呟いた。
「けど、あと一週間でラヴァール国に戻るのよね」
デューク様は私に驚いた表情を向ける。
メルとキャロルも勢いよく私の方を振り向き、固まっている。
私、そんな爆弾発言したかしら。……デューク様は私が一時的にデュルキス国に戻って来たことは知っているはずなのに。
「戻っちゃうの?」
「戻ってしまわれるのですか?」
メルとキャロルの声が重なる。流石血が繋がっているだけのことはある。
そんな悲しそうな目を向けられると、何も言えなくなってしまう。
「解決しなければならない問題をまだラヴァール国に残してきてるからね」
ジルが私に助け舟を出してくれた。