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久しぶりに悪女モード全開よ!!
「なんの為にここまで育てたと思っているのよ。私に絶対的な忠誠があるからこそ価値があるんでしょ。私のことを考えないで行動する者なんて、私には不必要なの」
彼を見下げるように私は言い放った。
非道かもしれない。……けど、ジルにはこれでいい。
私が変なのかもしれないけれど、彼の性格もまた歪んでいる。
ジルは私を暫く見つめながら「たしかに」と頷いた。
「アリシアにとって僕は使える駒にすぎないもんね」
そう言って笑う彼はとても嬉しそうに見えた。
ほら、やっぱり彼は歪んでいるのよ。こんな台詞を発せられて嬉しそうにする子なんてジルぐらいしかいないわ。
ジルがどこまで私に依存しているのかは分からない。
けど、私もそこまで鈍感な女ではない。ジルは私のことを頼ったりはしないけれど、何よりも私のことを考えていることは分かる。
……もうこれは私の手で治せるものじゃない。
だからこそ、あえて依存したままでいてもらうのが一番良いのかもしれない。彼が私に飽きるまで私のことを見ていればいい。
「ジルの人生は私のものなの。分かった?」
私は圧をかけるようにしてジルにそう言った。
ジルも私にそんな冷酷な目で言われると思っていなかったのだろう。「分かった」とゆっくり口を動かした。
ジル相手に悪女モードになるのはあの貧困村でジルを救った以来かもしれない。
少しおどおどしたジルを見て、思わず笑いそうになってしまう。
もうこれ以上いじめるのはやめてあげましょ。私は「だからね、ジル」と柔らかい声を出す。
「だから、貴方の人生が壊れてしまわないように私は生涯ジルを大切にするわ」
私は確かな声でそう言った。
ジルは目を開けたまま、私をただ真っすぐ見つめていた。彼の瞳が潤うのが分かった。
これは私が最初にジルを救う時に誓った想いだ。この先、ジルが私の想いを信じられなくなったり、忘れたりしたら、何度でもこの言葉をジルにかけよう。
彼が安心して私の傍にいられるように。
「ああ、本当に……」
「アリシアには敵わないよって?」
私は顔を綻ばせる。
これがジルを余計に依存させてしまうことだと分かっている。
けど、とことん依存すればいい。私がジルを手放すことなんてないのだから。
私はジルの頭を軽く撫でて、歩き始めた。
「僕はアリシアが最高の悪女としての人生を送れるように生きていくよ」
ジルが何かボソッと呟いていたけれど、私は聞かない振りをして足を進めた。
少し駆け足でジルは私の隣に並ぶ。
「今から悪女計画を立てるわよ」
一度初心に戻って、悪女としてデュルキス国で活躍してからラヴァール国へ行きたいもの。
ジルは明るい声で「うん!」と答えた。